最終年度は、方向転換能力に優れる子どものパワー発揮能力の特徴を明らかにすること、本研究によって得られた研究成果を関連学会で発表することを主な活動とした。児童期後期の子どもにおける方向転換走能力の特性を評価し、異なる特性を有する子どものパワー発揮能力の違いを明らかにすることを目的として、小学校5・6年生の男女42名を対象に、10m直線走、5-0-5方向転換走テスト、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)、5回連続リバウンドジャンプ(RJ)の測定を行った。昨年度に報告したように、方向転換走テストの結果には、疾走能力が強く関連するため、疾走能力の影響を考慮したCOD Deficitを算出した。方向転換走能力の特性を評価するため、10m直線走とCOD Deficitのzスコアを用いて、被験者を4つの群に分類し、一元配置分散分析によって群間の下肢パワー発揮能力の比較を行った。その結果、被験者は①疾走能力・方向転換能力ともに優れるA群10名、②疾走能力は優れるが方向転換能力の劣るB群12名、③方向転換能力は優れるが疾走能力の劣るC群14名、④疾走能力・方向転換能力ともに劣るD群6名に分類された。各測定項目における群間の差を検討した結果、身長、体重、CMJの跳躍高には有意差が認められなかった。しかし、RJ指数はA群がB・C・D群より有意に高く、B群とC群には差が認められなかった。以上の結果から、COD Deficitと10m直線走タイムのzスコアを用いることで、子どもの方向転換走能力の特性を評価でき、疾走能力と方向転換能力ともに優れる子どもは、RJのような接地の予測が求められるジャンプ運動でのパワー発揮能力が高いという特徴を有することが示された。今回の研究で十分なデータ数を確保できなかった中学生および高校生については、今後も引き続き測定を行っていく予定である。
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