研究課題
本研究の目的は、ヒトの音楽リズムの知覚・生成能力の個人差について研究することであった。具体的には、①スマートホン・タブレット使用に対応したリズム知覚・生成の個人差評価テストを開発すること、②リズム知覚生成の文化差を検討すること、③リズム知覚・生成能力の個人差に関わる脳機能構造を明らかにすることを目的とした。①については、前年度までに開発した Harvard Beat Assessment Test のiOS アプリケーション(H-BAT iOS)を国内外の研究グループに配信した。国外ではアメリカ・オハイオ州立大学、ブラジル・ブラジリア大学の研究者からコンタクトを受け、H-BAT iOS を配信し、国際共同研究へと発展させることができた。国内では、慶應義塾大学医学部、及び、福島県立医科大学と共同で、H-BAT iOSを用いて、精神疾患患者のリズム知覚・生成の個人差を評価する共同研究を進めることができた。②については、ドイツマックスプランク研究所と共同で、リズム知覚生成の国際比較を行った国際共同研究の成果について論文投稿準備を進めた。③については、リズム知覚判断中の近赤外分光法(NIRS)データを解析し、リズムテンポ変化の知覚判断中に補足運動野や運動前野など運動関連領域の脳活動量が増大するという興味深い結果を得た。さらに脳領域間の位相同期解析を行ったところ、テンポ変化の知覚に正答している場合には、不正答している場合に比べて、脳領域間の位相の非同期性が高まっているという結果を得た。これらの結果は、運動関連領域の脳活動、及び、脳活動領域間の位相の非同期性がリズム知覚に関係していることを示唆している。本研究成果について現在論文執筆を行い、英字学術誌への投稿準備を進めている。また今年度は、精神疾患患者の音楽機能の特性について、総説論文を発表することもできた。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)
KEIO SFC JOURNAL
巻: 20 (2) ページ: 70-82