研究実績の概要 |
本研究の目的は、進行期及び末期の変形性膝関節症患者(膝OA)と膝OAを持たない中高齢者を対象として、進行期及び末期膝OAの有無により筋酸素動態が異なるか否か、および進行期及び末期膝OAの有無により最高酸素摂取量(peak VO2)と筋酸素動態の関連が異なるか否かについて検討することであった。 平成30年度には、進行期及び末期膝OA患者(OA群)及び膝OAを持たない年齢・男女比をマッチングした中高齢者(CON群)における運動中の筋酸素動態を比較した。その結果、CON群に比較してOA群では骨格筋における脱酸素化が減弱しており、その減弱がpeak VO2の低値と関連を認めた。Peak VO2の低値は運動器疾患患者においても動脈硬化性疾患の発症リスクと関連するため、本研究の結果は運動器疾患患者における骨格筋代謝改善の重要性を示唆している。 研究計画当初は、OA群とCON群において体格をマッチングした上で、十分な対象者数を確保する予定であった。しかしながら、リクルート可能であった膝OA患者の大多数が女性であり、肥満と判定された。近赤外分光法は脂肪層における光の散乱の影響を受けるため、筋酸素動態の定量化が可能なOA患者が少数となってしまった。その一方、CON群においては筋酸素動態が測定可能な対象者を十分確保できた。そこで、膝OAにおける筋酸素動態の特徴を明確にする目的で、過体重が運動中の筋酸素動態に及ぼす影響について併せて検討した。その結果、過体重者においては通常体重者に比較して、軽度なインスリン抵抗性または心拍出量の増大により骨格筋における脱酸素化が減弱していること、及び光の散乱の影響を補正した筋酸素動態と最大酸素摂取量が関連することを明らかにした。以上の結果は、第73回日本体力医学会大会(福井)、46th Annual Meeting of the International Society on Oxygen Transport to Tissue (Seoul, Korea) など国内外の専門学会にて発表した。
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