研究課題/領域番号 |
16K16488
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
木内 隆裕 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 准教授 (80711986)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 上肢筋力 / 筋力増強 / Cross-education / 両肢間転移 / 神経科学 / 脳波 / 筋電図 / 機能的連結 |
研究実績の概要 |
一般に筋力増強のためには4週間以上のトレーニングが必要であり、Cross-education(四肢の片側で運動訓練を行った際に非訓練側でも運動機能が高まる現象)の発現までにも同様の期間を要することが知られている。したがって、この現象の神経基盤を明らかにするためには、筋力及び神経活動について4週間以上の追跡が可能な計測方法を確立する必要がある。
平成29年度は、前年度に作製した手指筋力計測装置を用いて、信頼性のある筋力計測方法を確立した。具体的には、まず手指伸展の筋力発揮課題に伴いやすい代償運動を防ぐため、安定した支持面を与える工夫を施した。次に、手の大きさの性差・個人差に由来する計測肢位のばらつきを認めたため、その調整方法と許容範囲を検討した。このような準備の後に、若年健常者を対象として、独自に考案した手指筋力計測法の信頼性検証を行った。筋力計測の間隔は今後の介入研究を想定して7±2日に設定し、検者内信頼性と検者間信頼性を検証した。その結果、高い信頼性を備えていることが実証され、(1)示指伸展筋力の計測方法の確立を完了した。 その一方で、今後の介入研究を見据えたコントロール課題の準備も進めた。先行研究ではコントロール群に対して運動課題が課されていないことが多いが、神経活動の変化を観察する場合は単なる運動後の変化と判別するため、Cross-educationが想定されない遠隔部位(例えば下肢)の運動を課す方が好ましい。このことから、若年健常者を対象として、手指筋力計測と同様の椅座位における足背屈筋力計測の信頼性検証を行った。その結果、類似の先行研究と比較して信頼性が低いことが示され、より制御しやすい運動を選択する必要性が示唆された。今後は、(2)大脳皮質-脊髄運動神経系の機能的連結性を長期追跡できる脳波・筋電図計測法の研究とともに、コントロール課題の検討も進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度の遅れが影響していることと、研究エフォートの確保が予想以上に難しかったことが主たる理由である。当初の計画では、平成28年度中に(1)示指伸展筋力の計測方法の確立を終えて、平成29年度には(2)大脳皮質-脊髄運動神経系の機能的連結性を長期追跡できる脳波・筋電図計測法の確立と(3)Cross-educationを誘導するトレーニング方法の確立を完了する計画であったが、現在完了しているのは(1)のみであることから「遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
当初は慎重を期して、(3)Cross-educationを誘導するトレーニング方法の確立のために十分な被験者数を確保して実験することを計画していた。しかし、最近の数年間にいくつかの関連研究が発表されたことから、それら学術論文を注意深く活用して訓練プロトコルを調整し、少数の被験者を対象としてその確認作業を進めるという代替策をとる。このような方策によって(2)機能的連結性を長期追跡できる脳波・筋電図計測法の確立に注力し、研究の遅れを挽回する方針である。その後、小規模ランダム化比較試験へと展開し、訓練群とコントロール群との間で、大脳皮質-脊髄運動神経系の機能的連結性に関する差異を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画と比べて実験回数が少なくなったことに伴い、被験者謝金を支払う機会も少なくなったことが最たる理由である。したがって、その繰越金は現在も進めている上記(2)の研究の被験者謝金として使用し、その残余金は平成30年度予算と組み合わせて、次なる実験の被験者謝金として活用する計画である。
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