研究課題
片側上肢/下肢の筋力トレーニングでは、トレーニングをしていない左右反対側の上肢/下肢でも効果が現れる(Cross-education)ことが知られており、筋力増強の神経科学的特性を探るうえで重要な現象である。本研究では、この現象の神経基盤の一端を明らかにするため、運動制御系である大脳皮質-脊髄運動神経系、及び大脳皮質内の機能的連結性に着目して、筋力と神経活動の変化を長期追跡する計画であった。2019年度は、前年度の筋力計測の信頼性研究に引き続き、Cross-educationを誘導するための手指筋力トレーニングプロトコルの検証を進めた。関連研究のレビューでは手指筋力トレーニングに関する情報が比較的少なかったことから、手足より近位部の筋力トレーニングのガイドライン等も参照してプロトコルを組み、その効果を検証した。扱う運動は示指伸展運動とし、トレーニング群20名とコントロール群20名に対して4週間に渡る介入を計画した。しかし、実際には拘束頻度の多さが影響して被験者募集がうまく進まず、現時点で各群8名ずつの参加にとどまっている。さらに、現時点では、トレーニング群の訓練肢でもあまり筋力変化が観察されておらず、プロトコル再検討の可能性も出てきている。今後も実験を継続して当初計画していた解析までを行い、その結果次第でプロトコルを組み直す方針である。本研究では、研究期間全体で、大脳皮質-脊髄運動神経系の機能的連結性を長期追跡できる計測法を確立し、手指筋力のCross-educationに関する小規模ランダム化比較試験を実施することまでを考えていた。実際には、その前提となる手指筋力トレーニングプロトコルの検証段階で終了となってしまったが、手指筋力の計測方法は確立できたことから、今後はこれを利用した研究を継続する。
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