近年、野外教育プログラムに関する研究は、場や個別性を考慮した質的アプローチと共に、教育・治療的構造の理論的検討が課題である。そこで本研究の目的は、児童期から青年期を対象に野外教育プログラムを実践し、自己成長の効果に対する定量的及び定性的検討を蓄積しつつ、そのプログラムの構造を理論的に定位することであった。本研究では、(課題1)野外教育プログラムによるクライエントの自己成長効果、(課題2)その個別性への影響、(課題3)その教育・治療構造の理論的検討であった。 (課題1)3つの野外教育プログラム(1泊2日大学生雪上、1泊2日大学生MTB、3泊4日児童キャンプ)を実践し、大学生に信頼感および児童に自然体験効果を測定し、それぞれの自己変容を検証した。その結果、大学生に変化は認められず、児童の積極性や自然適応などに向上が認められた。 (課題2)雪上野外研修プログラムを体験した大学サッカー部員に、約1年後に半構造化面接にて11名分の質的データを収集した。その後、チームビルディングを分析視点として、SCAT分析を用いて体験の個別性への影響について行なった。その結果、特に過酷な条件から生まれる危機管理意識と緊張感がチーム機能促進に影響し、チームという仕組みを意識できる社会化につながったと考えられる。しかし、すべての参加学生が影響を自覚しているわけではなく、少数は否定的に捉えていた。 (課題3)まず、野外教育プログラムの基準関連となる「(一般的な)カウンセリング」「エンカウンターグループ」「作業療法」「環境療法」を、機能的類縁プログラムとして操作的に位置付けて、その教育・治療構造の特徴を比較検討した。具体的には、外的な構造として「空間・時間・学習者・指導者・体制」等について、内的な構造として「学習者と指導者の関係性、指導者の主要な姿勢、体験の意味合い」について、差異や共通性を明らかにした。
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