研究課題/領域番号 |
16K16490
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
藤田 育郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (90608027)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 助走リズム / 走り幅跳び / 走り高跳び |
研究実績の概要 |
中学校体育授業における走り幅跳びおよび走り高跳びの助走から踏切局面において,ラスト3歩を強調した助走リズムの指導の有効性について検討した. 対象とした中学校の生徒たちに,助走ラスト3歩のリズムアップを強調した走り幅跳びの授業(7時間)と,同じく助走ラスト3歩のリズムアップを強調した走り高跳びの授業(7時間)を実施し,授業前と授業後の踏切動作の変容をキネマティクス的に分析した.被験者は,中学1年生から3年生であり,走り幅跳び17名,走り高跳び22名であった. 対象となった生徒たちの跳躍動作について分析を行った結果,走り幅跳びでは,踏み切り動作中における水平重心速度の減速が有意に増大したが,踏み切り時における垂直重心速度に変化がみられなかったことから,踏み切り指数が減少した.このことには,踏切脚の接地において単元開始時に比べ単元終了時で脚がより後傾した接地となっていたことも関連すると推察できる.踏切脚がより後傾して接地することは,地面反力による助走の減速成分が大きくなることとなり,助走スピードの大きな減速を招いていたと考えられる. 一方で,走り高跳びでは,踏み切り時の水平重心速度が有意に減少したが,垂直重心速度に変化がなかったことから,鉛直変換率が向上していた. これらのことから,助走ラスト3歩のリズムアップを強調した指導は,走り高跳びには有効であるが,走り幅跳びでは効果的ではない可能性が示唆された.これまでの助走ラスト3歩のリズムアップ指導から,例えば「タタン」というような,助走ラスト2歩のリズムアップを強調する指導の可能性についても検証が求められる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,走り幅跳びおよび走り幅跳びの踏切動作において,ラスト3歩を強調した助走リズムの指導の有効性について実際の授業実践から知見を得ることができた。特にそのプロセスでは,助走ラスト3歩のリズムアップを強調した指導は,走り高跳びには有効であるが,走り幅跳びでは効果的ではない可能性が示唆されており,このことは今後の跳躍系運動の学習指導における有効な知見となり得るといえる。よって,現在までの進捗として,おおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
中学校体育の走り幅跳びおよび走り高跳びの踏切動作において,ラスト3歩を強調した助走リズムの指導の有効性を検討した結果,助走ラスト3歩のリズムアップを強調した指導は,走り高跳びには有効であるが,走り幅跳びでは効果的ではない可能性が示唆された.このことについて,より発展的な知見を得るために,小学校段階を対象とした追証的な研究,さらには走り幅跳びにおける有効な助走リズムを明らかにする実践的研究に着手していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由・・・中学校の体育授業を対象とした調査を実施したが,生徒数が少ない小規模学校であったため,少ない実験機材でまかなうことができた。当初予定していたビデオカメラやその周辺機器を充実する必要が生じなかったためである。 使用計画・・・本年度に実施した中学校の体育授業を対象とした調査を発展させ,小学校や別の中学校での授業実践調査を予定している。その際の実験機材(ビデオカメラやその周辺機器)を充実させることを計画している。
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