研究課題/領域番号 |
16K16491
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
山崎 朱音 静岡大学, 教育学部, 講師 (40609301)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 創作ダンス / 即興表現 / ひと流れの動き / 指導と評価 |
研究実績の概要 |
本研究は,現職の保健体育科教員が創作ダンス授業において,即興表現を指導する際の「動きをみる力」を高めるためのカリキュラムを考案することを目的とし,5年計画で取り組んでいる。これまでの研究では,事例として取り上げた教材「新聞紙を使って表現」において,熟練指導者が「何」を「どのように教えるのか」の考察を進め,熟練指導者は取り上げた教材の特徴を理解したうえで,体を極限的に使う動きを引き出そうとすること,質感の異なる複数の動きを連続させて指導することに特徴があることがわかった。また,学習指導要領(文部科学省,2017)において創作ダンスの技能の一つとされる「ひと流れの動き」の十分な解釈が必要であることが挙げられた。そこで,「ひと流れの動き」とは何を示すのかについて,(公社)日本女子体育連盟が発している『女子体育』(2008年から2015年)を資料として考察を進めた。その結果,「ひと流れの動き」とは,動きと動きをつなぎ合わせて連続させ,誇張や緩急強弱を伴わせて変化させるといった「動きの工夫」のある一連の動きの流れを指すと考えられた。さらに,特に動きを変化させるためには,大小,強弱等の時間と力の双方が関連した視点を持つことで,変化のさせ方に多様性が生まれることが示唆された。さらに,『女子体育』(2009年から2019年)の「表現・創作ダンス」に関する実践記事の中から「即興」・「ひと流れの動き」について述べている語の関係を検討した結果,テーマからイメージを捉えて「即興」的に動くこと,そしてそれに変化を加えて「ひと流れの動き」にするという学習過程が確認された。 5年目の2020年度は,新型コロナウィルス感染拡大の防止による緊急事態宣言の発令等に伴う大学授業のオンライン化への対応や学生への対応のため,これまでの研究成果の整理を行うにとどまった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度までの4年間は、熟練指導者が「何」を「どのように教えるのか」の考察を多角的に検討してきた。またその成果は、学会にて随時発表を行ってきた。 2020年度は、新型コロナの影響により、学会での発表や実験の実施が難しく実施することができなかった。特に予定していた実験は、被検者が機器を共有したり飛沫が生じる状況を生むことから、現状では実験の実施は困難であると判断した。そのため、即興表現を指導する際の「動きをみる力」を高めるためのカリキュラムを考案することという本研究の目的の基礎として必要である、即興表現の学習内容と指導方法を再考することに注力した。 2021年度はこれまでの研究成果を論文としてまとめていくこととする。本研究の目的であるカリキュラム作成に向け研究計画の見直しと方針の転換を行ったため、研究の進捗は遅いと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021度は、これまでに得られた知見を、研究論文としてまとめてきたい。 創作ダンスの重要な技能といえる「ひと流れの動き」とは何か、どのように教えていくのかを整理し、いくつかの事例教材を挙げてその方法を検討していくこととする。その際、熟練指導者が学習者の動きの「何」をみて「どのような観点」で評価しているのかを示すことによって、創作ダンスの指導方法を広く発信できるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2020年度は、新型コロナウィルス感染症の影響により、研究計画の見直しが生じ、また予定していた学会が開催されなかった。以上の理由より、次年度に使用額が生じた。 次年度は、研究のまとめ(論文執筆)を行う。その際に必要な物品・経費を計上する。 (使用計画)パソコン(データ処理用)、データ保存用のHD、これまでに撮影した映像の編集ソフトを購入する計画である。また、研究協力者への謝金、英文校正費など論文投稿に向けた準備を行うための経費を計上する。
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