教育領域における実力発揮に関する課題を調査し,どのような身心の自己調整法が有効であるか検討することを目的に研究を遂行した。特に,あがり(過緊張)が問題となるような場面における現場へ出向き,高等学校および大学の運動部活動におけるパフォーマンスと覚醒水準の関係性について実践的なデータを取得することに努めた。 その結果,個人差や状況差が大きく関係しており,科学的根拠としての一般性を見出すことが難しいことがある程度示唆された。そこで,心理状態がパフォーマンスに大きく影響を与える射撃系の競技に焦点を絞り,同じ種目でも予選・決勝など状況が変われば実力発揮前の心身の状態が異なることを確認した。また,介入技法についてはまずセルフ・モニタリングの技法である自律訓練法を指導した。次に,実力発揮場面で本人の最適な心理状態へと調整するために個々の今の心理状態を測定し,アクティベーション及びリラクセーションの組合せを実践した。その結果,短期間ではあるもののモニタリング技法を熱心に練習し,介入技法を実践に近い形式で導入した選手から「だるさが解消し,スッキリした」,「落ち着いて試合に臨むことができた」といった主観的評価をが得られた。さらに,実力発揮度(練習での実力発揮/試合での実力発揮)も向上する傾向が確認された。 教育領域は,年齢や発達の状況が結果に大きく影響することが予想されるため,成果を検討するためには一過性ではなく,複数年の経過を継続的に検討することが重要であるため,今後の課題と考えられる。
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