本研究は、体育授業において「言語活動の充実」を図るための学習指導として期待される誘導発見型指導スタイルの指導効果を検証することを目的として、2年間の研究計画で進行した。本研究の進行にあたって、①誘導発見型指導スタイルが児童の「言語活動の充実」へ与える効果を検討すること、②教員養成段階の学生または初任教師で適用するための介入実験的授業を試み、その成果や課題を明らかにすることを研究課題として設定した。 本年度は、研究課題①(前年度)の追証と研究課題②について取り組んだ。研究課題①については、前年度の結果を追証するため、新たに新潟市内小学校で同校、同一学年を担当するベテラン教師、若手教師の2名を対象とした比較研究を行った。その結果、ベテラン教師と若手教師の授業で児童の学習成果に差はみられなかったが、学習指導場面中の「発問-応答」の時間や内容に違いが見られた。具体的には、ベテラン教師は「発問-応答」を端的に行い、学習指導場面に費やす時間を短縮し、運動学習場面の時間を十分に確保することができていた。しかし、若手教師は児童一人ひとりの意見を傾聴し、同内容でも繰り返し解説等を行う傾向にあったため、ベテラン教師よりも運動学習場面の時間を確保できていなかった。つまり、ベテラン教師と若手教師の行う授業では、児童の学習活動に影響を及ぼすという結果を追証することができた。 研究課題②については、研究課題①で得られた結果と対象教師からのインタビューをもとに、教員養成段階の学生、初任教師を対象とした介入の際に考慮すべき点を抽出するところまで行った。そこでは、「授業で取り扱う教材の解釈をあらかじめ対象者にしておくこと」、「構造化された発問を準備しておくこと」の二点が重要であることが明らかとなった。今後、この結果を参考に教員養成段階の学生、初任教師を対象とした介入実験的授業を行うことが課題である。
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