2019度においては,まず,前年度までの不足分のデータを補うために,1シーズン中の一定期間内(4か月間)に,Collective Efficacy(CE,バスケットボール版)と関連する要因(集団凝集性,一般性効力感)の縦断的なデータを収集することが目的であった.また,練習風景の撮影を行い,コーチングの記録・評価を実施した.結果として,わが国のトップレベルに位置すると考えられる大学バスケットボールに所属する男性92名(6チーム)と6名のコーチのデータを収集することができた. 得られたデータを対象に,「コーチング」(コーチの行動)が,「集団レベルの心理的変数」(CE,CO:集団凝集性)に対してどのような影響を及ぼし得るか(2時点の縦断的調査データの因果関係)について,交差遅延効果モデルと同時効果モデルを用いて検討を行った. 交差遅延効果モデルによる検討の結果,CEが後のCE,COに正の影響を与えること,COが後のCEを抑制することが示された.また,COが後のCOを予測できないことが認められた.加えて,コーチングはCE,COに影響を与え,その影響力はCEの方が僅かに強いことが確認された. 同時効果モデルによる検討の結果,CE,COは後のCE,COに正の影響を与えること,後のCEは後のCOに対して影響力を持つこと(同時効果)が明らかとなった.また,コーチングはCEにのみに影響を与えることが明らかとなった. 以上の結果より,競技レベルの高いバスケットボールチームにおいては,COが相対的に「移ろいやすい変数(状況によって変化しやすい)」であると捉えられることから,CEが重要な集団レベルの心理的変数となり得ることが示唆された.また,コーチングは,「メンバー間の結びつきの強さ」(CO)よりも,「チームの自信」(CE)の醸成に寄与することが示唆された,と結論づけられる.
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