研究課題/領域番号 |
16K16508
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研究機関 | 山梨学院大学 |
研究代表者 |
笠野 英弘 山梨学院大学, スポーツ科学部, 准教授 (20636518)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スポーツ組織 / スポーツ制度 / 社会的性格 / サッカー / ドイツ / ブラジル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,スポーツ愛好者を組織化するための制度的環境と,その環境変動に対するスポーツ組織の課題を,国際比較から明らかにすることである.そのために,平成28年度は,研究目的①(高度化を志向する日本のサッカー行為者が,ドイツ・ブラジルそれぞれの制度的環境のなかでサッカーを行うことで,彼らの社会的性格がどのように変容し,スポーツにかかわるどのような制度的環境の特徴が影響を及ぼすのかを明らかにすること)に対する先行研究の検討を行い,分析の枠組みを再構築した. 当初計画していた「スポーツと越境」に関する議論をレビューしたところ,越境することを制度的環境が変動することと捉えたうえで,制度と行為者の社会的性格との関係が論じられたものはほとんどなかった.しかし,菅原(1980)や粂野(1984)が展開した制度としてのスポーツ論(制度論)では,制度によって行為者の社会的性格が形成される分析枠組みが示されていた.ただし,その制度論では,制度を形成・変革する主体が見え難く,社会的性格形成過程における行為者の主体性の発揮を把握する分析枠組みも不足していた.そこで,スポーツ社会学の分野で(スポーツと越境に関する研究等でも)議論されてきた主体的社会化論を制度論に援用するとともに,スポーツ組織を制度形成・変革の主体として位置づけることで,スポーツ組織と行為者の両者の主体性を把捉し,マクロな視点とミクロな視点を包摂する分析枠組みを提示することができた.この分析枠組みからは,愛好者の組織化が求められるこれからのスポーツ組織において,特に愛好者が主体性を発揮して積極的にスポーツ組織に働きかけると同時に,スポーツ組織も,登録者(競技者)に限らず未登録者(愛好者)の要求を積極的に制度形成・改革に反映していく姿勢が求められるということが示唆された. この分析枠組みを用いて次年度以降の調査及び分析・解釈を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,研究目的①に対する先行研究の検討を行い,分析の枠組みを再構築したが,その検討やまとめに時間を要し,具体的な調査手法についての検討を深めることができなかった.しかし,具体的な調査手法であるライフストーリー・インタビュー法については,平成29年8月に計画しているドイツ及びブラジルでの現地調査に間に合うように検討を深める予定であり,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,平成28年度にできなかった具体的な調査手法についての検討をドイツ及びブラジルでの調査までに行い,その現地調査を8月に,当初の計画通り実施する.また,研究目的②(制度的環境の変動期として捉えられるJリーグ設立構想期や創設期における日本サッカー協会の組織内部の動向を明らかにすること)に対する先行研究を検討するとともに,機関誌を主とする文献調査も計画通り行う. それ以降は,当初計画通り,平成30年度は研究目的①に関してはドイツ及びブラジルでの調査結果の分析・解釈を行い,研究目的②に関してはインタビュー調査及び調査結果の分析を行う.そして,平成31年度は,研究目的①及び研究目的②をまとめ,本研究の最終目的であるスポーツ愛好者を組織化するための制度的環境と,その環境変動に対するスポーツ組織の課題を明らかにし,日本におけるスポーツ組織の課題を提示する.
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