プライオメトリックトレーニング手段としてのジャンプ運動は、同じ運動であっても行ない方によって特性が大きく変化すること、一定水準の技術や体力が確保されていないと適切な効果が引き出せないことが指摘されている。申請者らはこれまでに、技術性の高いジャンプ運動を実践する前に高めておくべき基礎的なジャンプ運動とその機序について示してきた。本研究では、これまでに検討してきたジャンプ運動よりも下位に位置づく筋力・パワートレーニング手段の関係性について力学的な視点から検討し、申請者らの先行研究と合わせて論考することで、基礎的な筋力から高度なジャンプ運動に至る階層構造モデルを構築することを目的とした。 筋力・パワートレーニングを定期的に実施している体育大学生および大学院に所属する男性競技者18名を対象に、両脚および片脚において、リバウンドジャンプ(できるだけ踏切時間を短く高く跳ぶ)、垂直跳(できるだけ高く跳ぶ)、様々な負荷重量によるスクワット(片脚試技は両脚試技の半分)を実施した。三次元自動動作分析システムおよびフォースプラットフォームを用いてデータを収集し、各運動におけるパフォーマンス変数(跳躍高、RJ指数など)、地面反力、下肢関節の力学量(関節トルク、パワー、仕事)を算出した。 その結果、各運動において地面反力および関節力学量の発揮パターンや大きさに関する相違が存在するものの、それぞれのパフォーマンスに影響する力学量に類似性のあることが認められた。つまり、このような各運動における類似性のある項目(下肢筋群の動員様相)を介して『トレーニング効果の転移』が期待できると考えられる。本研究では、上記の結果と我々の先行研究の結果を合わせてトレーニング学的に論考し、基礎的な筋力の向上から高度なジャンプ運動に至る一連の階層構造モデルを構築した。
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