本研究は2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の開催が我が国のエリートスポーツ、地域スポーツに関する政策にもたらす変容を考察する上での参照軸を提示すべく、2012年ロンドン大会が英国のスポーツ政策にもたらした変容、および政策の実践の場に与えた影響を明らかにすることを目的とした。具体的には、第1にエリートスポーツ政策における開催前後での政府系機関と競技団体の関係性の変化、第2に地域スポーツ政策における、開催都市である大ロンドン市と競技実施会場ではなかったシェフィールド市でのスポーツ政策の変容と<スポーツ的レガシー>の構築に向けた取り組みの成果と課題、を関連文書の分析と関係者へのインタビュー調査を通じて描き出そうとした。 最終年度となる平成30年度は、第1の課題に関しては、2018年6月の国際スポーツ社会学会(於ローザンヌ大学)で一般研究発表を行った。また、第2の課題については、2018年5月と11月に大ロンドン市のスポーツ行政関係者にインタビュー調査を実施した上で、2019年3月の日本スポーツ社会学会第28回大会(於福岡大学)で一般研究発表を行った。加えて、2012年ロンドン大会の評価報告書の内容を<スポーツ的レガシー>に着目して検討し、その成果を広島経済大学研究論集に寄稿した。 一方で第1、第2の課題ともにその成果を学会誌に投稿するまでには至らなかった。今後、学会発表の内容をもとに早急に論文化していきたい。また、当初は大ロンドン市だけでなく、シェフィールド市についても調査を行う予定であった。だが、関連する政策文書は入手できたものの、昨今の英国における地方財政の大幅削減に伴う市のスポーツ行政組織の改編の時期と本研究の時期が重なったため、行政関係者へのインタビュー調査が実施できなかった。そのため、シェフィールド市の事例に関しては体系的に研究成果をまとめることを断念した。
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