触覚フィードバックシステムの有効性を検討するため5名のブラインドサッカー選手を対象に介入実験を行った。シュート練習は計4回(1回、30から60分)であった。練習の際、選手は自身の体幹と蹴り脚の大腿部と下腿部に加速度センサを貼付し、シュート毎に自身のキック動作のフォームを点図ディスプレーで確認し、さらに標準動作モデルと自身のフォームとを比較した。練習介入前後で各選手のキック動作をモーションキャプチャシステムで撮影した。 結果として、ボール速度は介入前16.8±2.3 m/sで介入後16.9±2.0 m/sであった。蹴り脚重心速度最大値は介入前では大腿部3.2±0.3 m/s、下腿部6.3±0.6 m/s、足部14.0±1.3m/sで、介入後では大腿部3.3±0.3 m/s、下腿部6.3±0.4m/s、足部14.4±1.5m/sであった。蹴り脚セグメント角速度最大値は介入前では大腿部12.2±2.2 rad/s、下腿部30.2±1.8 rad/s、足部28.3±3.6 rad/sで、介入後では大腿部12.2±1.1 rad/s、下腿部31.5±3.3 rad/s、足部27.6±3.3 rad/s であった。 今回の介入実験ではボール速度と蹴り脚のスイングスピードに変化はなく触覚フィードバックシステムの有効性を確認することはできなかった。触覚フィードバックシステムは点図ディスプレー上のスティックピクチャでキックフォームを表現するため、体幹の捻り動作など三次元的な動きは表現できない。またディスプレーのドット間隔がやや粗いため(2.4mm間隔)、微妙な姿勢や関節角度の変化を表現することはできない。この様に技術的な問題はあるものの、定性的な評価として各選手に聞き取り調査を行ったところ「自分のキックフォームを確認することができた」「動きのコツが分かった感じがする」など肯定的な意見もあった。
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