研究課題/領域番号 |
16K16515
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 哲也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (60586460)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動学習 / 歩行 / 走行 |
研究実績の概要 |
ヒトの主要な移動運動モードである歩行と走行には、それぞれに独立性の高い神経基盤が内在し、従って、ともに下肢の重複した関節や筋の運動によって実現するこれらの運動も、そのトレーニング効果はモード間で共有されない。すなわち、歩行トレーニングにより走行のパフォーマンスは向上せず、同様に、走行のトレーニングで歩行パフォーマンスは獲得できないことが申請者らのこれまでの研究より明らかであった。では、これらの運動モードはどのような行動科学的要因によって異なる運動モードとして区別されるのか、本研究計画は、歩行と走行運動の構成要素である運動リズム、力学的要素、下肢動作の観点よりその決定要因を同定するとともに、今後、両モード間でのトレーニング効果の共有を可能とする条件介入のための資料となる基礎的なデータの取得を目的としている。2年計画の1年目であった当該年度は、特に、歩行や走行時の足部の接地と離地に伴って生じる力学的要素について地面反力に着目して重点的に検討した。特殊な力学的環境下で行う歩行と走行に生じるトレーニング効果は、走行時では接地時の制動と離地時の駆動に関連した地面反力成分の変化として顕著に反映される一方で、歩行時では主に接地時の制動に関する力の変化が大きく関係し、駆動成分の貢献は小さい。ところが、今年度取り組んできた方法により、本来は走行に特異的であった駆動に伴う力変化を歩行でも効果的に促すことができた。また運動リズムに関する検討も並行して実施し、これまでに得られた結果からは、対象とした運動リズム域内にでは、運動リズムは歩行と走行を分ける決定要因とはなっていない可能性が示唆された。これらの結果について、今後、さらに検討を進める必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来は歩行と走行を分類する決定要因の候補としての運動リズム、力学的要素、下肢動作について網羅的に検討する予定であったが、これまでに経験のある測定の延長で、力学的要素について先行して検討を開始した。結果的に、力学的要素の検討から歩行と走行を分ける行動科学的な決定要因について、その一端を示すデータを取得することができた。並行して運動リズムに関する検討も実施し、対象としたリズム域内においてまとまったデータを取得し、一定の見解を得ることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初、動作解析システムを使用した下肢動作の測定も視野に入れていたが、これまでに検討してきた運動リズムと力学的要素の解析で示唆に富んだ結果が得られ、今後、これらの要因についてさらに深く検討すべきとの方向性に至った。2年計画の1年目である当該年度に取得した、力学的パラメータを中心としたデータに加え、今後は下肢の筋肉の活動にも着目した測定を実施することで、歩行と走行を分類する行動科学的要因についてのより系統的な見解が得られることが期待される。今後、さらに精力的に測定を実施するにあたり定常的に被験者を確保する必要があるが、これまでの測定では一定の困難が生じていたため、新たな募集方法の立案が急務であり早急に解決方法を模索したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、動作解析を行うためのカメラ機器を購入の予定であったが、当該年度における取り組みを通して、地面反力測定に必要な別の機器の導入が今後の計画の推進にとってより有効であると考え、年度内の使用可能額では購入が不可能であったことから翌年度分として請求した助成金と合わせて購入する計画に変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
分離ベルト型トレッドミルにおける地面反力測定ユニットの導入に使用する。
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