本研究は,柔道の短時間の投げ込み運動が投げられる人(以下,「受け」)の頭部角加速度に及ぼす影響を明らかにし,頭部打撲のリスクを検証することを目的とした.「受け」は,O大学生男子柔道部員15名(年齢19.4±1.08歳,身長168.1±4.28cm,体重77.5±8.01kg)とした.投げる人(以下,「取り」)は,柔道経験9年,初段の大学生男子柔道部員1名(年齢18歳,身長173.0cm,体重74.0kg)とした.実験機器は,3軸加速度および角速度センサ(MA3-50AD-RDB-SS,MVP-RF8-GC,Micro Stone社製)を使用した.投げ込み運動は最大努力で行わせ,2.5秒に1回のテンポに5回遅れた時点で終了させた.この前後に「大外刈り」で投げられた際の頭部の矢状面における角加速度,頸部筋力(前屈・後屈),心拍数を測定した.本研究の安全性を確保するために,講道館柔道七段1名,六段2名の研究者が「受け」の受け身の習熟度,「取り」の投げ技の技能が十分であることを確認した.本研究は大阪教育大学倫理委員会の承認を得て行われた. その結果,投げ込み運動後における頭部の最大角加速度と頸筋力の前屈は投げ込み運動前よりも高いことが明らかとなった. 以上のことから,短時間の投げ込み運動後に「大外刈り」で投げられた場合,頭部打撲のリスクが高くなることが明らかとなった. 最終年度の研究実績は,学会発表では日本武道学会に「柔道の投げ技における初級者と熟練者の頭部角加速度の比較」のテーマで発表した.論文では,International Journal of Sport and Health Scienceに「Effects of different throwing techniques in judo on rotational acceleration of uke's head」の題目で掲載された.
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