研究課題/領域番号 |
16K16521
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
天野 達郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60734522)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 体温調節 / エクリン汗腺 / 皮膚血流量 / 熱中症 / 発汗 / 一酸化窒素 / シクロオキシゲナーゼ / 皮内マイクロダイアリシス |
研究実績の概要 |
深刻化する夏の熱中症を予防するには,身体内部の熱を体外へ放散する熱放散機能(特に発汗機能)を高めることが重要となる.発汗機能を改善する方法として持久性の運動トレーニングを行うことがあるものの,発汗機能が改善されるメカニズムには不明な点が残されている.近年の研究より,汗腺では様々な神経伝達物質が複雑に関わり合って発汗を引き起こすことが明らかになっている.そのため,持久性運動トレーニングを行うことで複数の神経伝達物質に対する汗腺の生理機能が向上して,発汗能力が高まる可能性がある.本研究では,汗腺における神経伝達を低侵襲的に検討できる手法を用いて,持久性運動トレーニングに伴う発汗機能の改善メカニズムを明らかにする. 平成28年度は,日常的に運動トレーニングを行っている長距離選手において一酸化窒素合成およびシクロオキシゲナーゼに由来する発汗機能が非運動鍛錬者と比較して改善されているかどうかを検討した.長距離選手10名および非運動鍛錬者9名が安静温熱負荷を行い,舌下温を安静時より1.5℃上昇させた.前腕部において,皮内マイクロダイアリシス法を用い,皮内に留置したファイバー内に一酸化窒素合成およびシクロオキシゲナーゼを阻害する10mM L-NAMEおよび10mM Ketrolacを循環させ,この時の発汗量を測定した.その結果,両群とも同程度にL-NAME部位で発汗量が低下した.一方,Ketrolacは両群とも発汗量に大きく影響しなかった.これらのことは,長距離選手の高い発汗機能には一酸化窒素やシクロオキシゲナーゼは関与しないことを示している.研究成果は海外の生理学のジャーナルに投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新しい所属先で一から実験室を作ることから始めたものの,当初の予定通り倫理審査,実験,論文執筆,論文投稿までを年度内に行うことができたため,当初の計画以上に研究が進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究では一酸化窒素やシクロオキシゲナーゼは長距離選手の高い発汗機能に関わらないことが明らかになったため,その他の要因が運動トレーニングに関わる汗腺適応に関与していると考えられる.今後は,その他の要因として,アドレナリン性の神経活動などに着目して研究を推進する予定である.
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