本研究課題では,状況が時々刻々と変化する中で状況の判断を強いられる場面において,ジュニアサッカー選手はどのように視線を動かし,情報を捉えているのかという問題について検討した.また,ジュニアサッカー選手の視覚探索方略における発達的変化を検討した.さらに,視覚探索方略における成人サッカー選手との類似点や相違点について検討することを目的とした. ジュニアサッカー選手48名(U-8: 24名,U-10: 18名,U-12: 6名)および成人サッカー選手20名を対象に,サッカーにおける意思決定テストを行い,意志決定スキルおよび視覚探索方略における発達的変化や,ジュニア年代とシニア年代ではいかなる違いがあるのかについて検討した.その結果,意志決定スキルにおいては,U-8から,U-10,U-12,成人と年齢が上がるにつれて,意志決定の正確性も向上するという結果に加えて,U-12の段階において,成人サッカー選手との間に統計的な差が見られないことがわかった.本研究の結果から,小学生高学年は,成人と同じような意思決定をすることが出来る可能性があることから,状況判断能力の獲得を促すトレーニングを取り入れる時期の一つであることが考えられる. また,意志決定時の眼球運動について検討した.その結果,ジュニアサッカー選手は,学年を問わず,成人サッカー選手よりもボール保持者に対して長く視線を向けていることが示された.一方,成人サッカー選手は,ジュニアサッカー選手よりも相手選手に対して長く視線を向けていることが観察された.本研究の結果から,ジュニアサッカー選手と成人サッカー選手では視線を向ける対象が異なっていることから,相手選手に注意を向けて情報を収集することが,より正確な意思決定につながる可能性が示唆された.
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