研究課題/領域番号 |
16K16527
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
渡 正 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (30508289)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パラリンピック / レガシー / ライフヒストリー |
研究実績の概要 |
本研究は、1964年のパラリンピック東京大会を契機に成立した日本における障害者スポーツ体制について、障害者スポーツの当事者たちが一体どのような社会的・制度的・経済的な状況のなかで活動していたのかを考察するものである。特に、本研究では、新聞等のメディア言説のみならず、当事者へのインタビュー調査から、彼/彼女らの活動を聞き取ることで、1964年のパラリンピックでの人々の実践から当時のパラリンピック/障害者スポーツを検討することが目的である。 今年度は、前半に1964年のパラリンピックについて現在まで判明している社会的状況について改めて整理した。また、本年度になって、新たに1964年大会の出場者とコンタクトができた。2名の対象者はどちらも当時北海道在住であり、かつ当時の資料なども豊富に残っていた。当時の写真などは現在もあまり残っていないため、貴重な資料を収集することができた。これまでの研究で1964年の参加者として紹介されたのは、本研究も含め、当時の障害者スポーツの中心であった大分県出身者がメインであり、またボランティアスタッフについては東京の大学出身者に偏っていたのに対し、今回の2名は北海道在住であり、これまでの事例とは異なる状況を検討することができた。本人の語りやパラリンピック出場を報じた新聞からは、当時、地方においてもパラリンピックへの関心が高かったことが判明した。 もう一人の第2部出場者は視覚障害者であるが、身体障害者とは異なり、当時から視覚障害者は盲学校などによって、比較的スポーツ状況が整備されていたことも判明した。また第2部への出場にあたっての走行会が開催されるなどこちらも社会的関心を集めていたことが伺えた。 こうした事例は、1964年をめぐる歴史的解釈を大幅に更新するものとまでは言えないが、新たな視点を付加することができるものであり、本研究を進展させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度は、本来であれば研究計画の最終年度であったが、この途中新たな研究協力者、すなわち1964年のパラリンピック参加者の情報がもたらされた。1名は1964年にパラリンピック第1部に参加し、もう一名は第2部へ参加した方であった。計画に則れば研究成果の公表にむけて事例の分析等を行うべきではあったが、貴重な研究協力者の出現であったため、2名の方へのインタビューデータと資料の収集、分析を行うこととした。 そのため、研究成果の公表等について遅れが生じているが、上記のように新たな研究協力者への調査を行ったためであり、研究自体の進捗はおおむね順調だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
計画を延長し、最終年となった今年度は、これまで収集したデータの分析を行い、戦前から戦後の連続性と、各対象者のライフヒストリー的視点から、1964年のパラリンピックについて分析を行い、成果発表へつなげたい。 また、本来2020年はパラリンピックの開催が予定されていたため、あいついで1964年大会に関する専門書や一般書が発刊されている。本研究は成果の公表の点では遅れているものの、そうした既存の解釈との異同を批判的に検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の段階では想定していなかった新たな研究協力者(インタビュー対象者)を発見したことによって、当該年度での研究成果の取りまとめを中止し、データの収集・分析、およびこれまでの研究成果との比較等を行うこととしたため、次年度に使用額が生じた。 次年度は、研究成果の報告や、データの収集およびこれまでの研究協力者への補足的な再調査などに使用する予定である。
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