研究課題/領域番号 |
16K16528
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
宮本 彩 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助手 (90768079)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | アンプティサッカー / クラッチ走動作 / スポーツバイオメカニクス |
研究実績の概要 |
アンプティサッカーは、上肢あるいは下肢に切断や麻痺などの障害を持った競技者がプレーする障害者サッカーの1つである。下肢に障害のあるフィールドプレーヤーは、義足等を着用せず、2本のクラッチを使用してプレーすることがルールづけられており “クラッチ走”の動作の習得・習熟は競技を行う上で重要といえる。本研究は、アンプティサッカー競技者のクラッチ走速度を向上させるための走動作を解明し、習得・習熟に向けたトレーニングの構築を目標としている。当該年度では、クラッチ走動作を定量的に分析・評価することを目的とした。 被験者は、国内のアンプティサッカーチームに所属する競技者12名であった(170.1±5.7cm,63.4±9.8kg,42.3±4.6才)。その内、大腿切断が10名と下腿切断が2名であった。競技歴の平均は4.5±3.2年で、過去にW杯日本代表経験者4名と初心者4名が含まれた。被験者は30mスプリントテストを最大努力で2回実施した。光電管を用いて10m毎の通過時間を計測し、走速度を算出した。走動作の撮影は、高速度カメラ(300fps)を用いて12-18m地点で行った。記録映像を基に1サイクルおよび各局面(1歩目接地,滞空,2歩目接地,クラッチ支持)を定義し、ピッチ,ストライド長,各局面に要した時間と各ステップ間の水平距離を算出した。 その結果、30m通過時間は6.61±0.87秒であった。変数のうち、ピッチ,ストライド長,1歩目接地に要した時間,クラッチ支持局面に要した時間,1歩目と2歩目のつま先間の水平距離,クラッチ接地点から次の1歩目のつま先までの水平距離において走速度との間に有意な相関関係が認められた。 高い走速度を得るためには、1歩目接地およびクラッチ支持局面において、より短い時間で、より遠くに移動することが求められ、脚での推進のみならずクラッチの操作技術の重要性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、クラッチ走動作の撮影を行い、一部、データの分析ならびに成果報告ができたことから、(2)おおむね順調に進展していると評価した。ただし、得られたデータについては、さらに詳細な分析を行う必要がある。また、クラッチ走に関連した体力要素についても検討を進めるべく、測定内容および方法の確立が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
アンプティサッカー競技者ならびに協会関係者の方々との関係が構築されつつある。研究協力者をさらに増やし、研究目標および目的の達成に努めていきたいと考えており、現在、追加測定に向けて調整している。具体的には、先行研究を参考にした体力測定の実施を検討している。また、クラッチ走実施時にクラッチにかかる力の測定を行いたいと考えている。当該年度の研究結果において、クラッチの操作技術の重要性が示唆されたことから、業者に依頼して特注品としてアンプティサッカー専用クラッチ荷重測定器の設計ならびに作成を行った。平成29年度以降は、購入機器を用いた実験によりさらに研究を進展させていく予定である。なお、記録した映像データの詳細な分析についても、引き続き進めていく予定である。 測定・分析と並行し、本研究の意義や得られた成果を広く発信していくため、学会発表に向けた準備も行っていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者(被験者)との協議により、当初予定していた人件費・謝金や旅費の支出を大幅に抑えることができたため、次年度使用額が生じた。なお、当該年度内においても、この費用を基にアンプティサッカー専用クラッチ荷重測定器の特注品を購入し、研究の推進を図っている。
|
次年度使用額の使用計画 |
データの分析・評価ならびに成果の公表に向けた統計処理ソフトの購入に係る経費に充当する。
|