研究課題/領域番号 |
16K16538
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
朝倉 雅史 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 助教 (50758117)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 校長職 / 資質能力 / 教職員人事行政 / 教科 / 保健体育教師 |
研究実績の概要 |
いくつかの自治体を対象に中学校長の出身教科を調査した研究では、保健体育科出身校長の割合が教科別教員比率に対して明らかに多い傾向がみられる。しかしそれが一般的な傾向であるのか、そうであるならばなぜそのような実態が生じるかについては、未だ経験則や推測の域を脱しえていない。本研究では保健体育教師が校長職に任用される実態とそのプロセスを明らかにし、任用プロセスにおける経験と学びが、校長としての力量形成にいかなる影響を及ぼすかを解明しようとするものである。特に、保健体育教師の校長職任用の実態と「体育の学習指導者」「体育の経営管理者」「学校の経営管理者」としての経験や学び、能力がいかに関連するか/しないかを実証的に検討することを課題としている。まず平成28年度は、本研究課題の基礎的な分析枠組みの設定および基礎的な資料・情報収集を行った。校長職の出身教科別比率を明らかにした研究を渉猟した結果、中学校教員全体における保健体育科教員の割合は約12%であるのに対し,ある政令指定都市の中学校長に占める保健体育科出身者の割合が33%である実態報告(松田,2009)および、京都府を対象に出身教科別の中学校長数と割合を検討した調査においても同様の傾向が指摘されている(榊原ほか,2009)。だが、その他に国内において本研究が課題とする実態調査は行われていないことが明らかになった。また、学校教育現場の現職教員および教育行政担当者へのヒアリングの結果、保健体育教師から校長職に任用される者の割合は確かに高いと捉えられているが、それは必ずしも校長としての資質力量の点からではなく、教育委員会内の体育・スポーツ担当部局への出向等が管理職登用と関わっている可能性があることが示唆された。ゆえに、校長職としての任用過程を明らかにする上では、資質能力論および人事行政の両面からその実態を明らかにしていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は当初、中学校長に占める保健体育科出身者の割合と傾向を把握するため、校長職の選考基準および条件が類似する都道府県・政令指定都市を類型化した上で対象自治体を選定し、各種統計資料および教育委員会が保有している資料の収集を行うこととしていた。だが、校長および学校管理職に関する先行研究および先行する実態調査に関する情報取集による本研究の分析枠組み構築を中心的課題としたため、資料収集の面で当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、前年度に整理した先行研究および各種資料に関する情報を踏まえて、各自治体を対象とした、公立中学校長数に対する出身教科別比率を明らかにする実態調査を早急に実施する。併せて、資質能力論からの実態解明を行うため、現職中学校長の資質能力の形成とキャリアおよび経験の関連について分析することを目的として、質問紙調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に予定していた自治体調査のための調査旅費の支出が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に予定している、自治体調査のための調査旅費として使用する。
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