研究課題/領域番号 |
16K16539
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研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
上島 慶 新潟工科大学, 工学部, 准教授 (70751824)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 卓球ボール / 落下領域 / 推定 / AEセンサ / 振動分析 / 高速カメラ / 画像分析 / パーティクルフィルタ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,卓球競技の戦術的要素である「打球コース」・「ボールスピード」・「飛行時間(ピッチ)」・「ボールの回転数」・「ボールの回転種」を「映像分析」と「卓球台の振動分析」を用いた工学的観点から即時的に定量化できる方法論を構築することである. 2018年度は,広帯域AEセンサを4個から5個に増やし,ボールが卓球台に落下した際に発生するAE波を広範囲で計測し,効率的にボールの落下位置を推定する方法を検討した.推定方法は,卓球台片面の56点にボールを落下させた際のAE波から,予め等振幅曲線を含む等高線データを作成し,そのデータを元に,ボールが落下した際にセンサから検出された領域の重なる部分をボールの落下領域として推定した.推定した座標は,等高線データとは異なる42点とした.推定の結果,AEセンサを4個から5個に増やすことで,全体的に推定精度を向上させることができた.センサを卓球台片面の四隅と中央に設置した場合の推定誤差平の均は,31.22cm,最大誤差は127.28cmであった.センサを卓球台片面の中央寄り4箇所と卓球台中央に設置した場合では,推定誤差の平均は42.37cm,最大誤差は,91.52cmであった.さらに,センサ4個の等高線データとセンサ5個の等高線データの平均値からボール落下領域を推定した場合は,さらに推定精度が向上する可能性が示された.しかし,領域ごとにみると,センサを4個から5個に増やすことにより,距離誤差が大きくなってしまう領域もいくつか存在した. 映像分析では,高速カメラを用いた卓球ボール落下位置の推定方法を2つ提案し,推定誤差を定量的に評価した.その結果,明らかな推定の失敗がなければ,誤差は平均で4~6cm程度であった.高速カメラを用いることで,高い精度でボールの落下領域を推定でき,なおかつ水銀灯の照明下でも推定できることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2016年度は,AEセンサを用いて卓球台へボールが落下した際の振動を計測し,等振幅曲線を利用した推定法を用いることで,ボールが落下した領域を推定できる可能性を示した. 映像分析によるボール落下位置の予測および推定については,これまでの処理方法にノイズ除去を追加して検出範囲を緩和するとともに,予測処理の一部を変更することにより,ボール落下位置の予測・推定の精度を向上させることができた. 2017年度は,広帯域AEセンサを用いて,ボール落下した領域を推定する方法の検証を行った.その結果,広帯域センサを用いることにより,小型AEセンサよりも,効率的にボールの落下領域を推定できる可能性が示された.また,センサを4つから5つに増やすことにより,卓球台の中央の推定精度を向上できる可能性が示された. 2018年度は,振動分析において広帯域AEセンサを4個から5個に増やし,なおかつ,実際の利用を考慮し,推定を行う等高線データとは異なる領域に落下させたデータを用いてボール落下領域の推定を行った.その結果,センサを4個から5個に増やすことで,推定精度を向上させることができた.しかし,領域によっては,センサを増やすことにより推定精度が低下する領域がいくつか存在することも明らかになった.映像分析では,高速カメラを用いた卓球ボール落下位置の推定方法を2つ提案し,実験により推定誤差を定量的に評価した.その結果,明らかな推定の失敗がなければ,実用的な範囲で定量化でき,水銀灯の照明下でも高い精度でボールの落下領域を推定できることが示唆された. 本研究の目的は,競技現場で活用できるシステムの開発であるため,競技現場での活用を踏まえると,「振動分析」と「映像分析」いずれも,推定精度をさらに向上させ,競技現場の条件下で利用できる方法論を検討していく必要があるため,当初の計画よりも遅れていると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,2018年度に続き,振動分析によるボール落下位置の推定と映像分析による推定の精度向上と実用化するための方法論の検討に取り組む.振動分析では,センサを5個に増やすことで,これまでよりも推定精度を向上させることができたが,卓球台の領域によっては,推定精度が低下してしまう領域も見受けらた.そこで,推定方法に振動が伝達する時間情報を加えることで,推定精度が低下した領域の推定精度の改善に取り組む. 映像によるボール落下領域の推定では,撮影に高速カメラを使用し,推定処理にパーティクルフィルタを加えることで,水銀灯の照明下や床に模様が入っている条件でもボールの落下位置の誤推定を大幅に減らすことができ,推定誤差も小さくすることができた.しかし,競技現場での利用を踏まえると,誤推定をさらに減らす必要がある.今後は,床の条件を公式試合の条件に即した形で,撮影や処理を行う必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した計測機器(ハイスピードカメラ)が見込み予算よりも若干少額で購入できたため,次年度使用額が生じた.残高は,次年度購入予定の使用機器の購入に充てる.
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