本研究は慣性センサを海で使用することを想定し、センサより得られた動作情報と画像解析から算出した情報との一致性を比較することで長時間計測の実用性を検証することを目的とした。 被験者は大学生水泳選手10名を対象に呼吸を伴うクロール泳と前方確認動作と呼吸動作を含むオープンウォータースイミングのヘッドアップ(以下、OWS)を屋内プールで比較した。ワイヤレス慣性センサ(スポーツセンシング社製、SS-WS1216)を腰部に装着し、体幹が傾くピッチングの角速度を測定した。 その結果、被験者10名におけるクロール泳とOWSのピッチング角速度の最大値と最小値に有意差は認められなかった。一方、個々でのピッチングの様子を測定することができた。キックは、体幹の傾きを減らす役割があり、キックの打ち方が腰背部のピッチングに影響している可能性があることから、慣性センサを用いた前方確認の区別には、装着位置を再検討する必要を示唆した。なお、腰背部の傾きは前方確認によって変化しないが、上背部は変化している可能性が推測された。(2018年3月:日本コーチング学会にて発表) この慣性センサでの泳動作評価は、自然環境での泳技術を評価することで波や流れによる泳技術の変化を明らかにできる可能性をもつ。環境に応じて必要となる泳技術を定量化できればコーチングに加え、安全教育への汎用を期待できる。 今後は、慣性センサでの測定を海洋環境で導入し、プールと海での泳ぎの違いを検討していく。
|