研究実績の概要 |
本研究は自然環境で泳ぐオープンウォータースイミング(以下、OWS)の泳法の評価法開発を目的とした。国内におけるOWSは、遠泳から普及・発展していることから長時間の測定、泳動作を阻害しない方法など実験条件の設定・制御も困難であり、携帯性に優れる慣性センサを用いて泳動作情報の抽出を試みた。 始めに競泳の長距離種目となる1,500mの自由形泳における慣性センサ情報の妥当性をプールにて検証した。評価指標は、上肢でのストローク数(何掻きしたのか)、泳時間であった。結果,慣性センサデータで推定したストローク情報は、95.66 ~ 99.09%と概ね一致した(馬場ら,Baba et al.2016)。複数の慣性センサを使用することで記録、ストローク頻度、プル局面、Index of Coordinationといった指標をOWSとクロールの両泳法で算出し (Baba et al.2016)、OWSの泳法においては、呼吸と前方確認の動作の影響による体幹の傾きであるピッチングを観察できた(馬場ら.2018)。また、パイロットスタディとして、初心者と熟練者の両被験者でもOWSの場合、非呼吸側の腕によるリカバリー局面が変化している現象を定量化し (Baba et al.2018)、海洋環境での長時間測定 (5km泳)によってストローク数、ストローク頻度を算出できた (Baba et al.2018)。以上のことから、慣性センサはOWSの泳動作を評価する手段の一つとして活用できる可能性が示唆された。しかし、推測した評価指標の精度・妥当性の検証と筋電センサとの同期には至っていない。その要因として、海洋での環境 (水温、波、測定場所等)の設定・制御の再現性が不十分であることが挙げられる。 今後、慣性センサと画像解析を併用する評価システムを確立する必要性が考えられた。海洋環境での映像にはドローンで泳者を追跡し、泳速度を測定するためにGPSを活用することで海洋環境特有の課題解決を試みていきたい。
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