2018年度は当初の予定には無かったが,トップレベルのゴールキーパー(GK)がゲームにおいてどのようにダイビングを行っているのかを検討した.標本は,2018FIFAワールドカップ全64試合における,全シュート1617本からペナルティキックならびに直接フリーキックによって放たれたシュート,GK以外の選手がブロックしたシュート,ゴール枠外に放たれたシュートを除いた416本のシュートとした.また,シュートの放たれた位置をゴールまでの距離と角度から,6つのエリアに分類し,シュートに対する防御行動(最終的にボールに触れる際の動き),防御行動前のステップの種類をエリアごとに抽出した. まず,得点になったシーンにおけるGKの防御行動をみると,ダイビング時における失点が多く見られた.これはゴールシーンにおいてはGKの届かない位置にシュートが飛んできていることが多いため,必然といえる. そこでシュートの放たれた位置によって,どのようなステップからダイビングを行うケースが多かったのかを416シーンの内,ダイビング動作が確認された150シーンを検証したところ,(ⅰ)近い距離かつ正面のエリアから放たれたシュートに対してはステップをせずに踏み切ってダイビングを行うケースが有意に多かった.(ⅱ)近い距離で角度がある場合はボール側の脚を構えた位置の内側に着いてダイビングを行っていた.(ⅲ)距離があって角度がある場合は,ステップの後に踏み切ってダイビングを行うケースが有意に多かった.これらの結果は,シュートの放たれる位置によって,GKが守るべき範囲,またシュート到達までの時間が限定されることが要因であると考えられる. これらトッププレーヤのプレーの傾向を鑑みて,これまで行ってきたダイビング動作分析の結果が,どのような場面で起こりうる動作なのかを対応させて実践面へ反映させることが効果的であると考える.
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