研究課題/領域番号 |
16K16554
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
丸山 啓史 呉工業高等専門学校, 人文社会系分野, 講師 (70708651)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サッカー / ゴールキーパー / 育成年代 / 指示 / 逐語記録 |
研究実績の概要 |
2016年12月に採取したデータをもとに,山陽地区の少年サッカークラブ8チームに所属するU-11年代少年ゴールキーパー(以下GK)20名がサッカーゲーム中に展開した発語、または指示の分析を行った。分析は第一に,各チームのGKに装着したミニICレコーダーから収音したGKの音声と,定点カメラにて撮影したゲーム映像を同期させ,GKの発語音声の逐語記録を作成した。次に,調査対象者をGK経験群(11名),GK未経験群(9名)に分類し,GKの発語・指示に差異が生じているか比較検討を行った。GKの総発語数1513語をKJ法にて分類したところ,11項目に分類された。その中でも,「指示」(70.5%)が高い割合であった。平均発語数はGK経験群(108回)がGK未経験群(36回)と比較して高い値を示した(p<0.05)。GK経験の有無と指示の関係をみると,GK経験群の平均指示数(72回)はGK未経験群(22回)と比較して高い値を示した(p<0.05)。また,GK経験群と比較してGK未経験群は指示対象がディフェンダーや,ディフェンディングサードに集中した(p<0.001)。攻撃に関わる指示内容の関係では,GK経験群は「直接的プレーの要求・促進」が高い値を示し,GK未経験群は「GKへのバックパス要求」が高い傾向であった(p<0.001)。守備に関わる指示内容の関係では「ポジション修正・確認」はGK経験群がやや高い値を示し,「マークの確認」はGK未経験群がやや高い値を示した(p<0.001)。以上の結果は,H29年度広島体育学会にて口頭発表した。 2017年12月には山陽地区の少年サッカークラブ8チームに所属するU-11年代少年GK15名がサッカーゲーム中に展開した発語音声の収音とゲーム映像を撮影した。また,採取した音声とゲーム映像を同期させ,逐語記録化したGKの発語・指示内容を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年8月~9月の夏季休暇中に執筆者の膝の手術につき入院をしており,データの分析作業に遅れが生じた。その結果、少年代のゴールキーパーの指示の実態調査を行った後に実施する予定であった,育成年代ゴールキーパー指導者を対象としたインタビュー調査を,指導者とのスケジュール調整とインタビュー資料の作成が間に合わず実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
既に学会発表を終えている内容については論文投稿の手続きに入っている。2017年度に採取したデータについては分析を終え,新たに学会発表(口頭)予定である。発表終了次第,論文投稿作業に入る予定である。 現在のところ,U-11年代とU-12年代のゴールキーパーの「指示」について実態調査が進んでいる状況である。このデータを基盤とし,育成年代ゴールキーパー指導者に,ゴールキーパーがゲーム中に展開すべき「指示」についてインタビュー調査を実施する予定である。小学年代,中学年代,高校年代,トップ(プロ)の各年代ゴールキーパー指導者から,各年代におけるゴールキーパーの戦術的思考・判断能力とそれを反映する指示の理想を調査することで,小学年代の実態と指導者の理想に差が生じているか否か,分析することができる。また,各年代ゴールキーパー指導者が理想とするゴールキーパーの戦術的思考・判断能力や指示を整理し,各年代ごとに体系化することで,育成年代サッカー指導現場においてスキル指導と比較すると具体的指導方策が十分ではない,各年代で獲得すべき戦術的思考・判断能力のモデル(指針)を提案する予定である。インタビュー調査対象者については,小学年代からトップチームまで一貫的な育成体制を整えているサンフレッチェ広島に所属する各年代ゴールキーパー指導者を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年8月~9月において,執筆者が膝の手術につき入院していたことが影響し,本来この夏季休暇期間に予定していたドイツへの資料・データ収集を目的とした渡航が果たせなかった。このことが,特に旅費において大きな助成金が生じている理由である。 2018年度については,夏季休暇中を利用し,1年度遅れたもののドイツまたはオランダへ研究資料・データ収集のために渡航費用として助成金を計上したく予定している。
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