「サッカーにおける育成年代ゴールキーパー(以下,GK)の「コーチング能力」の形成に関する基礎研究」における研究初年度の成果では,まず,育成年代GKトレーニングプログラムの問題点を明らかとするため,U-12年代GKトレーニングプログラムの実践と検証を行った.ここでは,GK未経験群でも日常的なトレーニングの中でGK動作の導入や,GKの役割を明確化することでGK好意度の向上が見込まれることが明らかとなった.しかしながら,GKの役割の中で重要とされる「コーチング能力」について,その実態とコーチング能力が形成される育成プロセスについて検討すべき課題が残された. そこで2016~2018年度にかけて,GK育成導入期のU-11年代とU-12年代を対象にGKがゲーム中に展開する指示について実態調査を行った.最終年度では,特にU-12年代に焦点を当て,当該年代GKの指示能力について学年差,GK経験差,GK好意度の差を独立変数として比較検討した.GK導入期における指示能力の学年差は,U-11とU-12年代に大きな差が認められなかった.GK経験差ではGK経験群がGK未経験群と比較して指示数が多く,オンプレー中の指示が多い傾向であった.また,指示対象ポジションやエリアが多面的であった.ただし,GK経験群の指示はGK未経験群と同様にボールに直接関与した選手への指示が多い傾向であった.これらの傾向は,独立変数をGK好意度上位群,中位群,下位群に分類した分析でも同様の傾向であった.したがって,U-12年代では学年やGK経験,GK好意度の差に関わらずオンプレー中にプレーの先を予測し,ボールに間接関与した選手へ指示を出すことは難易度が高い可能性がうかがえた.これらの結果は,日本体育学会第69回大会(口頭)や日本コーチング学会第30回大会(ポスター),呉工業高等専門学校研究報告80号にて報告した.
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