本研究は、少年期の野球選手の投球動作と野球肘検診所見の関連を明らかにし、この年代のケガを予防、防止することで、野球界の更なる発展に貢献することを目的とした。 つくば市近隣の野球少年少女を有志で募り、投球腕および非投球腕の肘関節のMRI診断結果を比較することで、異常所見がみられた選手とそうでない選手とに分類(以下、陽性群と陰性群)した。また、全被験者の投球動作を2台の高速度カメラで撮影した画像を手動デジタイズし、DLT法を用いて三次元座標値を算出した。これらの座標値からキネマティクス的変量を算出し、陽性群と陰性群とで比較した。 60名の小学生野球選手のMRI診断結果と投球動作との関係について分析した結果、陽性群の特徴として、陽性群は踏出足接地時における投球腕肘関節の外転角度および軸足股関節の外転角度が有意に大きかった。また、リリース時では、陽性群は軸足股関節および投球腕肘関節の屈曲が有意に大きかった。陽性群の投球動作が生じる要因として、肘を上げるという過度な指導や、体幹の筋力が不十分にも関わらず球速の増加を意識させる指導、ボールの握り方などから生じるリリース時の動作不良が示唆された。以上のことから、少年期の野球選手の投球動作指導においては、過度な球速増加や肘を高く上げるという指導を控え、身体が突っ込まない程度の適切なストライド幅で、踏出足接地からリリースにむけて肘が上がっていく動作を指導することが有用であると示唆された。以上の内容について、静岡大学で行われた日本体育学会(2017年9月)において口頭発表を行った。 さらに、陽性群および陰性群の典型例の投球動作映像を専門家3名に視聴してもらい、不良動作に関するインタビューを行った結果をまとめ、論文投稿の準備中であり、今後も本研究を継続的に実施する予定である。
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