研究課題
RNAシークエンシング(RNA-Seq)を活用し、低強度運動による抗うつ・抗不安効果およびその分子基盤を解明することを目的に実験を行った。昨年度、低強度運動が一過性のストレスによる認知機能の低下を防ぐことを明らかにした。そこで、本年度はその運動で高まるストレス抵抗性の分子機構について、RNA-Seqを活用し遺伝子の網羅的解析を行った。実験では、安静群、運動群、一過性のストレス群、運動+ストレス群の4群にグループ分けし、実験終了後、摘出した海馬を背側と腹側にわけ、それぞれRNA-Seq解析を行った。その結果、低強度の運動トレーニングにより一過性のストレス後の遺伝子発現が増大し、その変化は海馬の背側部よりも腹側部で顕著であることが判明した。この運動+ストレス群の海馬背側部から抽出した遺伝子群をDAVIDのFunctional Annotation functional annotation clustering toolを用い解析した所、様々な遺伝子群の中でもNucleusやTranscriptionの遺伝子群が大きく変動していることが明らかになった。また、一過性のストレスのみを負荷した群と運動+ストレス群で重複している遺伝子を抽出し、その変動を確認したところ、重複する遺伝子の90%近くが群間で反対の挙動を示した。本研究成果により、低強度運動が記憶・学習を高めるだけでなく、うつ病などの一因であるストレスへの対処能を高める上も有用であり、実験より得られた遺伝子群または遺伝子が運動のストレス抵抗性を担うことが示唆された。
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Neuron
巻: 96 ページ: 402-413
10.1016/j.neuron.2017.09.020