研究課題/領域番号 |
16K16560
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
森川 真悠子 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 助教(特定雇用) (10596068)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中高年者 / インターバル速歩トレーニング / 体力 / 10年継続 / エピジェネティック |
研究実績の概要 |
我々の体力は、20歳代をピークとし、30歳以降10歳加齢する毎に5~10%ずつ低下する。その主な原因は、加齢現象の一つである「老人性筋委縮症(サルコペニア)」である。ここで興味深いのは、この加齢に伴う体力低下と医療費がよく相関することで、このことから「加齢による筋力低下こそが、生活習慣病の根本原因である」ことが示唆される。 そこで、我々は、過去10年以上に渡って、6,200名の中高年者を対象に「インターバル速歩トレーニング」を実施し、体力向上が生活習慣病の症状(医療費)に及ぼす効果を検討した。その結果、5ヵ月間、22ヶ月の継続率は、それぞれ95%、70%と他の運動処方に比べて極めて高く、その継続率に比例して体力向上、生活習慣病症状改善効果を認めた。 以上の結果は、体力こそが生活習慣病の症状改善に極めて有効である、ことを示唆する。 そこで、さらに長期間、すなわち10年間のインターバル速歩トレーニングの継続効果を検証する。すなわち、今回明らかになった148名のインターバル速歩10年継続者について、身体特性(身長、体重、体脂肪率)、持久力測定(歩行による最高酸素摂取量)、等尺性膝伸展・屈曲筋力測定を行い、その継続効果を検討する。その結果、10年間継続率を調べた結果、20%と高く、彼らの筋力、体力は対照群に比べて、それぞれ20%、40%高いレベルが維持されていることを発見した。さらに、血液採取を行い、白血球から炎症関連遺伝子のキー遺伝子であるNFκB1,2遺伝子についてメチル化測定を行う。その原因となる炎症反応関連遺伝子活性を測定し、それらを対照群と比較し、運動継続の重要性を臨床症状と遺伝子レベルで明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度計画では、10年間のインターバル速歩トレーニングの継続効果を検証することである。今回、明らかになった148名のインターバル速歩10年以上継続者について、身体特性(身長、体重、体脂肪率)、持久力、下肢筋力(膝伸展・屈曲)を測定した。さらに、白血球から炎症関連遺伝子のキー遺伝子であるNFκB1,2遺伝子について、メチル化測定を行うために血液採取を行った。これら問題なく測定が終了した。
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今後の研究の推進方策 |
10年間のインターバル速歩トレーニング継続が、対照群に比べて、非常に高い体力向上、維持効果を認めたことから、炎症促進遺伝子の不活性化が起こることが期待できる。平成29年度では、その遺伝子修飾測定を実施し、臨床症状と遺伝子レベルで明らかにする予定である。また、インターバル速歩をやめた後、その効果はどの程度残留するのかを検証するため、得られたデータを解析する予定である。 以上の結果から、インターバル速歩トレーニングによる体力の維持・向上と生活習慣病の症状の関係を、そのトレーニングの開始時期、期間を含め、遺伝子レベルで明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子修飾測定の分析について測定値が安定しなかった為、再度、条件検討を行う予定である。そのためには試薬などが必要であるため、次年度に使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
10年間のインターバル速歩トレーニング継続者、インターバル速歩をやめた中途退会者について、平成28年度に血液採取したサンプルを使用し、遺伝子修飾測定の分析を実施することがメインである。そのデータから臨床データと遺伝子レベルで明らかにする予定である。
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