研究課題/領域番号 |
16K16562
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研究機関 | 北翔大学 |
研究代表者 |
吉田 昌弘 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 准教授 (30404776)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 足関節 / スポーツリハビリテーション / 音刺激 / フィードバック / 筋活動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,スポーツ外傷により筋機能が低下した症例に対して,音刺激(聴覚情報)によるフィードバックを用いて筋活動の賦活を促し,動作習得の促進を試みる新たなリハビリテーション手法を確立することである. 平成28年度は,実験環境における計測システムを構築し,データ測定から解析までの流れを完成させること目標に設定した.本研究では,下肢の筋活動状態を簡易式筋電計を用いてモニタリングし,さらに,筋活動レベルに応じて電子音によりフィードックするシステムが必要である.実験で使用する簡易式筋活動モニタ(MuscleAlive, 身のこなしラボラトリー社)は,一定の筋活動レベルに到達すると電子音が鳴る機器であるが,機器はモニタリング用に開発されたものであり,測定データを記録および解析する機能は有していない.そこで,機器開発社と研究代表者間で直接打ち合わせを行い,測定データを記録し,分析できるよう測定機器のカスタマイズを進めた.システムの改良を重ねた結果,電子音が発生したデータを特定(ラベリング)することが可能となり,予定していた実験が実現可能なシステム環境が構築された. また,パイロット実験を実施する過程で,本研究で測定予定である足関節筋力の測定再現性が乏しいことが明らかとなった.この問題を解決することを目的に,足関節筋力測定用の機器を新たに制作した(足関節外返し/内返し筋力測定器,竹井機器工業株式会社).これにより,筋力測定の高い再現性が担保され,精度の高い測定が実施できる環境を整備することに繋がった. 以上により,平成28年度の目標とした簡易式筋活動モニタを用いて,動作中の筋活動のモニタリングおよび音刺激によるフィードバックの効果を判定するための測定方法を確立させることが概ね達成できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究期間は4年間であるが、平成28年度は初年度にあたり、実験環境の整備、測定システムの構築が到達目標であった。本研究で使用予定の機器には、大幅なカスタマイズが必要であり、カスタマイズにあたっては技術者と協働して進めることが求められた。測定機器の開発者と試行錯誤を重ね、本研究で必要なデータを収集できる測定環境を整えることができたことは、次年度以降のデータ収集に向けた大きな進展であった。また、パイロット実験を重ねる中で発生した問題点についても、新たな測定機器を考案し、従来の測定機器では難しかった精度の高い測定を可能とすることで解決することができた。研究を進める過程で起こる新たな課題に対しても、研究協力者らと協議を重ねることで柔軟に対応することができ、研究進捗に大きな影響を及ぼさなかった。 以上より、現在までの進捗状況は概ね順調に進展していると判断できる。研究が順調に進む中、現段階で不足している点は、最新の学術的情報のインプットである。同領域の学術論文は収集しているが、海外の研究者らとディスカッションをしながら情報を得る機会は十分に得られていない。平成29年度以降は、これらの課題を解決するため、積極的な学術集会参加が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、前年度で得られた基礎データの情報を元にして、健常群を対象に音刺激フィードバックを用いた介入プログラムを実施し、スポーツ動作中における筋活動変化への影響を検証する予定である。運動課題は、パイロット実験を実施する中でジャンプ動作を含んだプログラムを複数設定する。介入プログラムでは、運動中の下肢筋活動をモニタリングし、一定の筋活動量(%MVC)に達した時点で音刺激によりフィードバックを行う。介入期間は約 8 週間とし、介入後に再度スポーツ動作中の筋 活動量を計測し、介入効果を検証する。 平成29年度で実施予定の研究は、平成30年度以降に実施予定である足関節捻挫群を対象とした介入プログラムを展開する上で重要な位置づけとなる。プログラムの選定、データの測定・解析に加え、効果検証を明らかにするための比較対象の検討等が必要である。有疾患群を対象に円滑な介入プログラムを進めるためにも、長期にわたる実験の展開を十分にシミュレーションしながら実践することが求められる。研究を進める段階で生じる問題点については、申請者が所属する北翔大学研究センター研究員および札幌医科大学の医師および理学療法士で本研究領域に高い専門性を有する研究者に助言を得ることにより、 適切な解決策を講じて研究を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験で使用する簡易式筋活動モニタ(MuscleAlive, 身のこなしラボラトリー社)は,一定の筋活動レベルに到達すると電子音が鳴る機器であるが,機器はモニタリング用に開発されたものであり,測定データを記録および解析する機能は有していない.そこで,機器開発社と研究代表者間で直接打ち合わせを行い,測定データを記録し,分析できるよう測定機器のカスタマイズを進めた.カスタマイズの作業に予定より多くの時間を要し、技術的な問題は全てクリアされたが、平成28年度内にソフトウェアおよび技術料等を確定することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
簡易式筋活動モニタ(MuscleAlive, 身のこなしラボラトリー社)のカスタマイズ料金は、平成29年4月に金額が確定し、繰り越した次年度使用額と概ね同額であった。平成29年度5月中に執行予定である。
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