| 研究課題/領域番号 |
16K16563
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| 研究機関 | 上武大学 |
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研究代表者 |
二橋 元紀 上武大学, ビジネス情報学部, 講師 (20738017)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | 足関節捻挫 / 慢性的足関節不安定性 / 経頭蓋磁気刺激 / 皮質脊髄路興奮性 / 足関節捻挫再受傷 / 評価指標 |
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| 研究実績の概要 |
本研究は足関節捻挫再受傷を予防するための新たな評価指標の策定を目指し研究を進め、運動制御に重要な役割を担う皮質脊髄路興奮性の可塑的変化と足関節捻挫受傷頻度の関係性を明らかにすることを主な目的とした。
方法として、大学スポーツ競技選手を対象に神経生理学的アプローチ、臨床評価アプローチ、コホート研究アプローチの3アプローチを用いた。神経生理学的アプローチとして、予防動作（運動修正）の運動制御に重要と思われる皮質脊髄路に着目し、足関節捻挫受傷頻度および慢性的足関節不安定性(CAI)に関連した皮質脊髄路興奮性の可塑的変化を経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて検証した。具体的には皮質脊髄路の興奮性調節を総体的に評価できる入出力特性（入出力曲線の定常値、閾値、最大傾斜を定量）、および抑制性を評価できるサイレントピリオドを記録し、受傷頻度およびCAIとの関係性を検討した。被験者をThe Cumberland Ankle Instability Tool (CAIT)に基づきCAI群、CAI予備群、および非CAI群に分類し、被験者群間の特徴を比較した。また、受傷回数別でも比較検証した。さらに、臨床評価アプローチとして、CAITを用いた慢性的足関節不安定性の評価、動的バランス評価(SEBT)および下肢アライメント評価等を実施した。
現在のところ、CAI群における長腓骨筋の皮質脊髄路興奮性（入出力曲線の閾値、最大傾斜）が、非CAI群に比較して増大し、サイレントピリオドが長くなることが明らかになった。受傷頻度別において、受傷なし群に比較して1回受傷群、複数回受傷群で閾値が高くなることが明らかになりつつある。足関節捻挫再受傷の一機序として、慢性的足関節不安定性における皮質脊髄路興奮性の特徴、および受傷頻度に伴う相違点が明らかになれば、足関節捻挫後の新たな再受傷予防対策の確立につながることが期待される。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28, 29年度中に、計画を予定していた慢性的足関節不安定性および受傷頻度に伴う皮質脊髄路入出力特性の評価、抑制性指標の評価をある一定のコホートに対して実施することができた。経頭蓋磁気刺激を用いる評価であるため被験者選定（てんかん等）には注意も必要となるが、現状ではてんかんに関するガイドラインにも基づいて問題なく実施できている。現時点での総被験者数は大学生男女アスリート約60名であり、The Cumberland Ankle Instability Tool (CAIT)を用いて、23点以下を慢性的足関節不安定性群(CAI)、24点以上27点以下をCAI予備群、および28点以上を非CAI群に分類した。群間における比較検討の結果、CAI群、CAI予備群における長腓骨筋の皮質脊髄路興奮性（入出力曲線の閾値）が、非CAI群に比較して増大していることが明らかになりつつある。また、受傷頻度別において、受傷なし群に比較して1回受傷群、複数回受傷群で閾値が高くなることが明らかになりつつある。この一部結果に関し、平成29年度において国内学会発表を実施した（日本体力医学会学術大会）。しかしながら、一部被験者群に偏りがあるため、追加検証の必要性があると考えられる。さらに、動的バランス評価(SEBT)でも慢性的足関節不安定性群(CAI)において、バランス機能の低下を認めつつある。
一方で、平成29年度にかけて実施予定であった前向きコホート研究に関して、皮質脊髄路興奮性に関して検討した約60名を対象に、その後の外傷・障害（特に足関節捻挫）発生状況を継続的に追跡調査してきた。一定の傾向をつかみつつあるが、さらに検討すべく研究実施をもう一年延長することとした。平成30年度と合せて継続的に研究遂行し、経過を前向きに追跡していく予定であり、さらに研究の信頼性が増すものと考えられる。
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| 今後の研究の推進方策 |
平成29年度中の結果を踏まえ、平成30年度では主に前向きコホート研究を実施していく。その前提となる神経生理学的アプローチにおける被験者数が現在60名程であるが、被験者数の偏りをなくし、神経生理学的なデータの信頼性を高めるためにもあと20数名程の被験者に対する追加検証を実施していく予定である。また、前向きコホート研究を実施するにあたり、追跡期間を延長し、外傷・障害発生のリスク要因をより詳細に検証していくことを目指す。併せて、被験者分類としてThe Cumberland Ankle Instability Tool (CAIT)に受傷頻度を加え、慢性的足関節不安定性群(CAI;23点以下、受傷既往あり）、CAI予備群（24点以上27点以下、受傷既往あり）、Copers群（28点以上、受傷既往あり）、コントロール群（28点以上、受傷既往なし）に細分化することにより、足関節捻挫後に慢性的足関節不安定性へと移行していくメカニズム、ならびに受傷既往があるにも関わらず慢性的足関節不安定性へと移行していないCopersのメカニズムを神経生理学的な観点から明らかにできるものと考える。
さらに、前向きコホート研究を実施する中で、平成29年度では外傷・障害（特に足関節捻挫）を発症した選手を対象にして、神経生理学的なアプローチおよび臨床的アプローチによる評価指標をロジスティック回帰分析により検証し、外傷・障害発生のリスク要因をオッズ比として算出していく予定である。
また、本研究結果に関しては、学会発表のみの成果であった。そのため、平成30年度の中で一定の成果を原著論文にまとめ上げていく。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度において、実験遂行はある程度計画的に実施できたものの、データの信頼性を担保するために被験者数が若干少なかった。そのため、期間延長した今年度は新たな被験者による追加検証をさらに実施していく予定であり、そのために被験者金を確保していく。また、前向きコホート研究の実施にあたり、期間延長にともない外傷・障害に関する追跡調査の質を向上させていく予定である。
さらに、今年度は研究論文投稿のための費用を確保したい。国際雑誌への投稿に際して、英文校正、論文投稿費、および論文掲載費用などの支出が見込まれるため、経常したい。平成29年度までの研究成果に加え、本年度における追加検証を行なう中で研究精度をさらに向上させていく予定である。
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