研究課題/領域番号 |
16K16565
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
柿木 亮 順天堂大学, 医学部, 助教 (70614931)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 温熱負荷 / サルコペニア / ロイシン / タンパク質合成 / タンパク質分解 |
研究実績の概要 |
熱ストレスは、骨格筋の肥大を引き起こすことが示唆されており、筋タンパク質合成を刺激するロイシンの摂取によってその効果を高める可能性が考えられる。昨年度実施していた高齢マウスの実験に、本年度は若齢のコントロール群を追加したところ、熱ストレスとロイシンの組み合わせがサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)を抑制したことが明らかとなった。そのメカニズムを探るために、大腿四頭筋を対象に、タンパク質合成・分解のマーカーを分子生物学的手法により評価した。その結果、温熱負荷やロイシン摂取によって、筋細胞内のタンパク質合成を調節するmTORシグナル伝達の活性化に差は見られなかった。しかしながら、細胞内に必須アミノ酸の一つであるロイシンを取り込む輸送体であるLAT1のタンパク質発現量は、加齢によって増加した一方で、温熱負荷とロイシン摂取を組み合わせた場合にのみ減少した。筋タンパク質分解のマーカーであるユビキチン化タンパク質は、加齢によって増加していたが、温熱負荷とロイシン摂取を組み合わせた場合にのみ減少した。これらの結果から、加齢により筋タンパク質分解が亢進するが、その代償としてタンパク質合成に必要な材料を多く供給するためにLAT1の発現量が増加していることが示唆された。また、熱ストレスとロイシンの組み合わせは、筋タンパク質合成よりもむしろ、加齢によって亢進する筋タンパク質分解を抑制することによって、サルコペニアの抑制に働いている可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの長期飼育を要する実験である「温熱負荷がサルコペニアに及ぼす影響」についての研究は非常に良く進展している。一方、「温熱負荷が筋肥大をもたらすメカニズムの解明」についてはより詳細に検討するために培養細胞での実験を計画しているが、今年度は温熱負荷条件、細胞増殖率及び筋分化能の評価方法の検討に予想以上に多くの時間がかかってしまった。しかし、実験プロトコルは確定し、次年度以降は大いに進むと期待できる。研究全体としてはおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、マウス筋芽細胞であるC2C12培養細胞を用いて、温熱負荷がC2C12細胞の増殖および筋分化に及ぼす影響を明らかにするとともに、アミノ酸トランスポーターの発現、タンパク質合成・分解のバランスに焦点を当て、温熱負荷による骨格筋適応メカニズムを明らかにする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、当初計画していたよりも培養細胞での実験が進まなかったため、分析に必要な消耗品購入費が少なかった。また、学内業務により国外学会での学会発表が行えなかったため、旅費が少なくなった。
|