研究課題/領域番号 |
16K16565
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
柿木 亮 順天堂大学, 医学部, 助教 (70614931)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 温熱負荷 / 熱ストレス / C2C12 / タンパク質合成 / 細胞内シグナル伝達 / 分化・融合 |
研究実績の概要 |
本年度は、マウス筋芽細胞株のC2C12細胞を用いて、熱ストレスがC2C12細胞の筋管細胞への分化・融合および筋タンパク質合成に関連する細胞内シグナル伝達の活性化に及ぼす影響を検討した。C2C12細胞を増殖培地で2日間培養した後、分化培地に交換し、37℃あるいは39℃の条件でさらに培養した。分化開始1、2、3および5日後に、細胞に対してミオシン重鎖の免疫染色を行い、筋管細胞への分化・融合を評価した。分化開始2日後において39℃条件でDifferentiation indexとFusion indexが37℃条件に比べて有意に高値となった。また、筋管細胞の直径を計測したところ、39℃条件で筋の成長が促進される傾向が観察された。しかし、ウェスタンブロット法を用いて細胞内シグナル伝達の活性化を検討したところ、熱ストレスはmTOR、p70S6Kおよび4E-BP1リン酸化の有意な増加をもたらさなかった。また別の実験で、分化5日後の筋管細胞に対して39℃で60分間インキュベートした後、異なるタイムポイントで細胞を回収し、ウェスタンブロット法を用いて分析したところ、熱ストレスによりmTOR、p70S6K、4E-BP1リン酸化の増加は観察されなかった。一方、mTORシグナルの上流のAktリン酸化は37℃条件よりも有意に低値を示した。これまで我々はマウス骨格筋を用いて、温熱負荷がAktやmTORシグナルの活性化をもたらすことを明らかにしてきた。今回の実験では、急性および慢性的な熱ストレスが筋管細胞の筋タンパク質合成関連シグナル伝達の活性化に影響を及ぼさなかったことから、筋細胞の温度上昇のみでは筋タンパク質合成を促進しない可能性を示唆する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属研究部署が新研究棟へ移転することに伴い、研究機器・備品の整理、荷造り、不用品の廃棄、搬出・搬入作業、荷出し等の移転作業を実験室、実習室、居室の3箇所を段階的に実施しため、約3ヶ月の間研究を中止せざるを得なかった。そのため、阻害剤を用いて、温熱負荷が筋タンパク質合成を調節する細胞内シグナル伝達の経路を詳細に検討する研究が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
C2C12細胞を用いた研究では、熱ストレスを与えた場合にタンパク質合成を調節する細胞内シグナル伝達の増加が観察されず、これまで申請者がマウス骨格筋を対象に明らかにしてきた骨格筋への熱ストレスの影響とC2C12細胞の応答が異なっていた。このことから、熱ストレスが骨格筋に与える影響は、単に筋細胞の温度上昇だけの影響ではなく、液性因子や血流などの変化に起因する可能性を示唆している。したがって、今後の研究では、主にマウスを対象に、温熱負荷がタンパク質合成に関与する細胞内シグナル伝達経路を明らかにするために、阻害剤を使用して検討していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属研究部署の移転作業により当初計画していた研究が遅れているため、マウス購入費および消耗品費に関して次年度使用額が生じている。次年度は、遅れていた研究を実施するためにマウス購入費および消耗品費に多く充てるとともに、研究成果を発表するための論文作成費に充てる予定である。
|