本年度の研究は、交代浴処置が運動後の筋損傷および筋痛に与える影響を自律神経活動および酸化ストレス応答の観点から明らかにして、コンディショニング方法の確立とその効果のメカニズムを明らかにすることを目的として行った。 健康な一般成人男女10名が本研究に参加し、①処置なし条件または②交代浴条件(45℃で4分+10℃で1分を4セット)に分けられた。交代浴は、温浴4分(約44℃)×冷浴1分(約10℃)を4セット行った。全被験者は、筋損傷・筋痛を誘導するため、上腕屈筋群に対する最大伸張性運動を(角速度30deg/s、10回×3セット)を行った。被験者は、最大伸張性運動の前および直後、1、2、4日後に、自律神経活動、主観的筋痛の程度、上腕周径囲、肘関節可動域、最大等尺性筋力、血中のCK活性、酸化ストレスおよび抗酸化力の測定を受け、筋損傷・筋痛に対する処置の効果を観察した。 その結果、自律神経活動において、トータルパワーは、前値と比較して両条件とも有意に低下して回復し、4日後で処置なし条件と比較して交代浴条件で高い傾向にあったが、交感神経および副交感神経活動に差は認められなかった。酸化ストレスには処置条件による差は認められなかったが、抗酸化力は交代浴条件で有意に高かった。上腕周径囲は交代浴条件で低値傾向にあったが、統計的な差は認められず、その他の筋痛、関節可動域、筋力および血中CK活性には、本研究で用いた処置の効果は認められなかった。 本研究で用いた交代浴による処置は、自律神経活動を高め、抗酸化力が増加する可能性があり、抗酸化力の増加に伴い運動後に生じる筋損傷の回復は、程度はわずかであるが促進させる、または悪化を抑制させる可能性が示唆された。また女性被験者では性周期によって処置の効果が異なる可能性が推察された。
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