研究実績の概要 |
本研究の目的は、1)小学生の基本的運動能力の運動発達過程及び障害発生パターンを明らかにすること,2)運動器スポーツ障害発生者の発症後の跳動作および投動作の縦断的変化を明らかにすることである。最終年度は小学生における走動作(50m走)および跳動作(立ち幅跳び)の縦断的評価の解析を行った。走動作においては、低学年時に走速度の遅い児童は、走速度の速い児童と比較して高学年時にタイムの短縮幅が大きいことが明らかになった。運動パターンの成熟度と走速度の関係においては、低学年時は運動パターンと走速度に有意な関連がみられたが、高学年では関連はみられなかった。また、低学年から高学年における跳動作の縦断的変化においては、運動パターンの変化が11通り観察され、低学年の間に運動発発達の多様性が確認された。跳動作の男女の比較においては、立ち幅跳びの距離において男女を比較すると、低学年および高学年ともに有意な差がみとめられなかったが、運動パターンにおいては女子において成熟したパターンを獲得しているものが少ないことが明らかになった。研究期間全体を通じて、運動器・スポーツ障害の発症者数が少なく、定量的な評価は困難であったが、個別の症例に対する運動学的特徴を明らかにすることができた。小学生年代における基本的運動能力の発達過程を調査し、投動作においては体幹の回旋運動やステップ幅の増加が発達的に難しく、跳動作においては跳び出し時の上肢の振り上げや着地時の股関節および膝関節の屈曲角度の増加などが獲得が遅いことが明らかになった。
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