研究課題/領域番号 |
16K16574
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
岡本 陽 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60436996)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 学校感染症 / 環境消毒 / 手洗い / うがい / 微生物群衆解析 |
研究実績の概要 |
平成29年度は1.感染経路対策としての群衆解析、および2.感染源対策のエビデンス構築を行った。 1.うがいによる感染症予防効果のメカニズムを明らかにする目的で、うがい前後の咽頭細菌叢の変化を中心に実験、解析を行った。その結果、うがいの前後では総微生物数はあまり変化しないものの、ほとんどの被験者において特定の微生物グループの割合が減少していることがわかった。この微生物グループは咽頭に常在しているが病原性をもつもの、また他の感染症の原因となるウイルスの感染を助けることがわかっているものが含まれている。以上の結果から、うがいは微生物数を極端に減らすものではないものの、物理的な洗浄作用により特定の微生物グループを減少させ、その結果としてかぜやインフルエンザなどの呼吸器感染症を予防する効果が期待できることが示唆された。本研究成果の解析を進め、学術雑誌に論文を投稿する予定である。 2.感染源対策として、学校における消毒薬を用いた積極的な器物消毒による感染症(学校内感染)予防効果を検討するため、児童生徒の欠席数を指標として某県内の協力校を介入群と対照群に分けて実験を行った。冬季2シーズンの調査を行った結果、感染症予防については相関が見られ、また対照群では学校内での感染が疑われるケースが見られたものの、介入群では学校内感染がなかった。以上の結果から、消毒薬を用いた積極的な器物消毒は、学校内における呼吸器感染症の伝播を予防する可能性が示唆された。本研究の一部は査読付き雑誌に投稿し、原著論文として掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.感染経路対策(うがい)の微生物群衆解析について、ある特定の微生物グループの割合が減少していることが明らかになった。本研究の実験計画では、うがいのメカニズムについて検証を行っているが、水道水に含まれる塩素などの消毒効果というよりも、むしろ物理的な洗浄作用が重要である可能性が示唆され、当初の作業仮説をおおむね説明できる知見が得られた。 2.感染源対策のエビデンスとして、当初の作業仮説であった積極的な器物消毒が児童生徒の欠席数に与える影響を評価することで、学校内における感染を予防できる可能性があることを数値として表すことができた。本研究の限界として、比較的小規模の学校を対象としたことから、大規模な学校へも本研究の知見が適応できるとはいえないが、感染症を予防するための検討材料としては十分であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は前年度までの研究内容を補完するための追試や細部の検討を行うとともに、これまでに得られた知見をまとめ、積極的に学術雑誌に論文を投稿して本研究の内容を社会に還元することを目指す。 当初設定した作業仮説は順調に進展しているため、研究計画の大きな変更はない。 また、感染経路対策の微生物群衆解析、感染源対策のエビデンス構築ともに、前年度の内容をうけ当初の計画以上に進展できるよう努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な試薬購入が計画より低価格だったため、若干の繰越が生じた。次年度の研究経費として活用する計画である。
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