研究実績の概要 |
「1.感染経路対策のエビデンス」について、前年度までに手洗いおよびうがいにより、ヒトの体表に存在する菌群が変動することを網羅的解析により明らかにしたところであるが(現在論文作成中)、本年度はウイルスに着目した研究を行った。ヒトインフルエンザウイルスやノロスイルスなど、特に学童期の児童・生徒に感染症を引きおこすウイルスをターゲットとしたRT-qPCR検出を試みたが、あらゆる検体から、疾病に関連するウイルス核酸を検出することができなかった。この結果から、健常人には病原性をもつウイルスが普段から付着していることはほとんどないと考えられた。 「2.感染源対策のエビデンス」について、1年目の調査の結果、欠席数を指標として積極的な環境消毒により感染症の流行が抑制された可能性が示唆された結果を査読付き学術論文として発表した(藤井、岡本 et. al., 学校保健研究, 2017)。 本研究成果の再現性について調査するため、積極的な環境消毒を行った2年目の調査研究において、介入群の小学校では、同規模近隣校の対照群と比較して欠席数に差はあまりみられなかった。しかしながら、介入群において、学校内感染が疑われる同一学級内での2日以内での同様の疾患による欠席がみられなかったことから、学校内での感染症の流行が抑制された可能性が示唆された(現在論文作成中)。また学校環境における病原体を含む微生物汚染度の調査を培養法、遺伝学的手法の両方を用いておこなった。その結果、乾燥した表面には微生物は少なく、水道の蛇口など水分が補給される場所に多く微生物が生存していることが明らかとなった。この成果を査読付き学術誌に投稿し、採択された。(藤井、岡本 et. al., 東海学校保健研究, in press)。
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