申請研究の目的は,漫画を用いた健康教育の効果検証,および漫画を用いた健康教育特有の心理的利得の特定,である。 申請研究初年度にあたる平成28年度は,(1)身体活動の実施,および食習慣の改善を意図した健康教育漫画の開発,(2)特定保健指導の受診者を対象とした漫画を用いた健康教育の有用性研究,および(3)漫画を用いた健康教育介入研究において想定されている心理的利得に関する文献レビュー,をおこなった。 (1)については,出版社,およびイラストレーターと共同で健康行動変容の段階(開始・継続・逆戻りの予防)に応じた健康教育漫画を3種類作成した。(2)については,研究協力地域における特定保健指導の対象者20名に対して,健康教育漫画(健康行動の開始編)をもちいた1ヶ月間の試験的介入をおこなった。その結果,12名がプログラムを完遂し,完遂者においては食行動の実施状況に有意な改善が認められた。(3)については,The Cochrane Libraryを検索データベースとした文献検索の結果,12件の該当研究が抽出され,主人公への共感,物語への感情関与,同一視,自身の現状との関連性の認知,意思決定への認知的不協和/葛藤,認知的態度,内包的態度,感情態度,行動への好意性,意思決定への満足度,およびスティグマ,といった34の心理的指標が抽出された。 本年度の研究の結果,漫画を用いた健康教育は,通常の健康教育とは異なる特有の心理的利得を有しており,健康に対する興味・関心の低い対象者にも有用な健康教育の手段となり得る可能性が示唆された。
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