本研究の目的は、がん予防情報を効果的に創出し、がん予防行動の意思決定を支援するヘルスコミュニケーション方策の検討であった。2年目までに、がん・がん予防情報の受信側(国民)の現状・ニーズや我が国のがん対策目標と、マスメディアから発信されているがん・がん予防情報との間にはギャップがあることが確認された。このギャップを解消するべく、最終年度である3年目は、マスメディアにおけるがん予防情報の創出・増加を検討するために、現在、実際にマスメディアにて情報を創出している記者を対象としたインタビュー調査およびその解析を行った。 性別、年齢層等ができるだけ多様になるように機縁法で募集をした国内の新聞などの記者を対象に、1対1の半構造化インタビューを実施した。インタビューでは、がん情報の取り扱い経験、記者自身のがん・がん予防情報に対するイメージ、がん・がん予防情報の取り扱いやすさ・扱いにくさなどを聴取した。得られたデータの逐語録を作成し、質的データをNvivoにて分析し、がん予防情報の創出を阻害している要因、およびその解決方法を検討した。 がんに対する記者自身の考えや、これまで取り扱ったがん関連記事の内容や数にもよるが、国民のがん予防情報のニーズが現状より低く見積もられる傾向やがん予防に対して国民の関心が高まることがあるか疑問に持たれている傾向があった。また、がん予防情報の創出を阻害している要因としては、情報自体の新規性が低いこと、一般的な生活習慣病に関する予防と変わらないこと、取り扱うきっかけがないということが概ね共通してあげられた。 今後は、正しいがん予防情報を示すだけでなく、より具体的に国民の関心が高まる時期、国民が認知していないことや誤解していることなどを明らかにし、それをマスメディア関係者に示すことが、マスメディアでのがん予防情報の創出につながる可能性が示唆された。
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