研究課題/領域番号 |
16K16589
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
中島 進吾 お茶の水女子大学, お茶大アカデミック・プロダクション, 寄附研究部門講師 (50750014)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脂肪滴 / アストロサイト |
研究実績の概要 |
肥満や糖尿病などの生活習慣病がアルツハイマー病の発症リスクを高めることが明らかになってきている。アルツハイマー病発症において脳内での脂肪滴蓄積の関与が示唆されてきているが、依然として不明な点は多い。本研究では、中枢神経系のエネルギー代謝の中心となるアストロサイトに着目し、脂質の異常蓄積が中枢神経系に及ぼす影響を初代培養細胞および食事誘導性肥満モデル動物を用いて検討した。 昨年度までに、脂肪酸の中でもオレイン酸がアストロサイトにおける脂肪滴蓄積を強く誘導することを明らかにしているが、その脂肪滴蓄積にはジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼが関与していることが明らかとなった。また脂肪滴を形成したアストロサイトでは、リポ多糖による炎症誘導が緩和されることを見出した。 食事誘導性肥満モデルとして、油脂の異なる高ショ糖/高脂肪食を作製しラットに摂取させたところ、飽和脂肪酸を多く含むラード群ではオープンフィールド試験における活動量の低下が見られたが、オレイン酸を多く含むオリーブオイル群では観察されなかった。質量分析計を用いて血中の脂質を分析したところ、ラード群では特徴的な変化は見られず、オリーブオイル群ではオレイン酸を含有した各種脂質分子の増加が観察された。 以上のことから、本年度は①アストロサイトにおける脂肪滴合成経路および脂肪滴が炎症緩和に寄与すること、②飽和脂肪酸摂取が活動量低下など行動異常を惹起すること、が明らかとなった。今後は、脂肪滴蓄積と行動異常の関係、および飽和脂肪酸が脳機能に及ぼす影響について検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は初代培養アストロサイトにおける脂肪滴蓄積が炎症反応抑制に寄与するなど、新たな発見があった。しかしながら、育児休業および所属機関の移動が生じたため、予定していた高脂肪食摂取ラットにおける脳内脂肪滴の観察、脳内脂質分析、脳内への脂肪酸投与実験を実施できなかった。研究期間を延長し、上述の実験を遂行することで、脳内における脂肪滴蓄積の行動への影響を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
行動に異常が見られたのは脂肪滴が形成されやすいオレイン酸を多く含んだオリーブオイルではなく、飽和脂肪酸を多く含んだ高ラード食を摂取したラット群であった。アストロサイトにおける脂肪滴蓄積は、病態における脂肪滴蓄積を模倣できる可能性があるが、食事由来の肥満と認知機能低下に関与するかどうかは不明である。このような研究結果から、上述の試験を通じて脳内に脂肪滴が蓄積した影響を観察するとともに、飽和脂肪酸の多量摂取が脳機能に及ぼす影響を脳内脂質分析や各種栄養素の脳内への取り込み測定など、その他の可能性についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年10月より育児休業を4か月近く取得したため、研究計画を延長し次年度も継続して実験を行うこととなった。平成30年度は、国立精神・神経医療研究センターにて、動物実験を中心に研究を遂行する予定である。
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