研究課題
平成29年度は、平成28年度の研究テーマであった糖尿病をアウトカムにした研究を継続して実施した。先行研究において、全身持久力レベルが高ければ糖尿病の発症リスクは低いことが報告されているが、これらの研究はベースラインの一時点のみの影響について検討されている。糖尿病の予防に対して、継続的に全身持久力を高く維持することが必要なのか、それとも、一時的にでも高くなれば糖尿病の予防に影響があるのかについては明らかにされていない。そこで、日本人男性を対象に最大23年間追跡したコホート研究を実施した。追跡開始以前の7年間で測定された全身持久力をもとに、一時的に全身持久力が高くなったことを示すスパイクの指標と、継続的に高いことを示す指標をそれぞれ算出し、これらの指標を用いて対象者を四分位にそれぞれ分類し、糖尿病の発症リスクを比較した。その結果、全身持久力のスパイクを示す指標と糖尿病の発症リスクの間には関連は認められなかったが、全身持久力が継続的に高ければ、糖尿病の発症リスクは低いことが明らかとなり、この関連は追跡開始時点の全身持久力を考慮しても認められた。さらに、本研究の知見をより広い社会的観点から検討するため、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動2013」で設定されている全身持久力の基準を継続的に達成することで糖尿病の予防につながる可能性があるかについて検討を行った。その結果、7年間全体を通して全身持久力の基準を達成していなかった対象者と比較して、達成していた対象者の糖尿病のリスクは低い値を示した。次に、平成29年度は高血圧をアウトカムにした研究を実施した。上述の基準の達成回数と高血圧の発症リスクとの関連について検討を行っており、全身持久力の基準の達成回数と高血圧リスクの間には明確な負の量反応関係が認められており、現在、国際誌に投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度に計画されていた糖尿病をアウトカムにした研究については、平成29年度で2本の国際誌に受理された。さらに、平成29年度に計画されていた高血圧をアウトカムにした研究については、現在投稿中であるため、当初の計画通り、おおむね順調に進展していると言える。
平成30年度は、現在投稿中の高血圧をアウトカムとした研究の論文投稿を継続して行う予定である。さらに、これまでと同様のアプローチを用いて、脂質異常症をアウトカムにした研究に取り組む予定である。
次年度使用額が生じた理由は、データセットおよび解析に関する人件費を使用せずに済んだことが主な理由となっている。現在の状況を踏まえ、翌年度も解析作業を想定した人件費は発生しないと考えられるため、翌年度分として請求した助成金と合わせて、主に成果発表に関する旅費や投稿料等に使用する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
バイオメカニズム学会誌
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