研究課題
SOD1は酸化ストレスの抑制に働く一方で、ビタミンCは活性酸素と反応してその無毒化を行なう。SOD1とビタミンC合成に関わるAkr1aを同時に欠損したマウス(SOD1;;Akr1a二重欠損マウス)は著しい酸化障害を示すことがわかった。一方で、ビタミンC の給与により、その致死的な表現型に改善が認められることから、生体ではビタミンCによるスーパーオキシドの抑制が重要であることが示唆されたため、分子機構について詳細な検討を進めている。本年度では、SOD1;;Akr1a二重欠損マウスをビタミンC給水下で飼育した後、ビタミンC給水を停止することによる心臓および肝臓における組織障害の程度を解析した。その結果、以下のことを明らかにできた。(1)ビタミンC給水停止2週間以内に、二重欠損マウスの生存率は顕著に低下した。(2)ビタミンC給水停止に伴い、二重欠損マウスの体重は顕著に低下した。(3)心エコー検査の結果、ビタミンC給水停止に伴う心機能の低下は認められなかった。血圧・心拍数は正常の範囲内であった。(4)ビタミンC給水停止に伴う血漿中ALT値の増加(肝障害の増悪化)が認められた。この結果は、とくに老齢マウス(約6ヶ月齢)で顕著であった。以上の結果から、ビタミンCは、SOD1;;Akr1a二重欠損マウスの生存にとって必須であり、生体内で酸化ストレスからの組織障害にビタミンCが保護的に働いていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度では、初年度の目標であったSOD1;;Akr1a二重欠損マウスのビタミンC非給水下における心臓に対する酸化障害を中心に検討した。心機能を評価した結果、SOD1;;Akr1a二重欠損マウスの死因は心臓の障害ではないことを明らかにできた。一方で、ビタミンC非給水によって肝障害が顕在化することを示せたため、マウスの表現系型の解析結果はほぼ期待通りであった
初年度の結果からSOD1;;Akr1a二重欠損マウスの肝障害を明らかにできたため、今後はマウスの肝臓における酸化ストレスならびに小胞体ストレスが、ビタミンC の投与により緩和するかどうかに焦点を当て、病理組織学的解析と遺伝子発現、脂質・蛋白質の酸化状態を検討し、その分子機構を検討する予定である。同様に、活性酸素によりオートファジーの障害が起こることで小胞体ストレスや肝障害を助長することが報告されているため、SOD1;;Akr1a 二重欠損マウス肝臓でのオートファジー障害の程度を評価する予定である。また、SOD 1;;Akr1a 二重欠損マウスから単離した肝細胞にビタミンCを添加して培養後、ビタミンCを含まない培地に移した時に現れる細胞死への影響およびその細胞傷害の分子機構について解析を進める予定である。これにより、in vivoとin vitroの両面からビタミンCの保護的影響の詳細な分子機構の解析や酸化修飾の標的分子の探索を行いたいと考えている。
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