研究課題
睡眠呼吸障害は、心筋梗塞、心不全や脳卒中など様々な心血管疾患の危険因子であることはよく知られている。我々はこれまで、睡眠呼吸障害による血中の一酸化窒素や心血管機能への影響について研究してきた。睡眠呼吸障害の第一治療選択である持続気道陽圧療法によりこれらの心血管疾患の発症リスクが抑制されることも報告されている。この発症抑制のメカニズには持続気道陽圧療法による血圧低下効果のみならず、中性脂肪やコレステロールの低下作用による影響も報告されている。したがって、睡眠呼吸障害患者において、将来的な心血管疾患の発症や疾患増悪を予防するためには、十分な治療により患者の脂質代謝異常をコントロールすることが重要である。しかしながら、睡眠呼吸障害における脂質代謝異常となるメカニズムについては十分に検討されていない。近年、質量分析計により包括的な脂質メタボローム解析が可能となり、ヒトにおいてもその代謝メカニズムを検討することができるようになった。本研究では、脂脂質質量分析法を用いて、①睡眠呼吸障害患者を対象に、健常人との比較および重症度別の比較により、睡眠呼吸障害の脂質代謝異常への影響、②炎症に関わるとされている脂肪酸領域を対象に睡眠呼吸障害の炎症へのかかわり方について検討する。前年度に引き続き検体収集および睡眠ポリグラフ検査を継続した。収集した血液は遠心分離後、血漿部分を-80℃で保管し、解析を順次行っている。睡眠ポリグラフ検査を実施した患者において、対照コントロール群との比較により、96種の脂質分子種に有意な差を認めた。
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