研究実績の概要 |
呼吸器感染症予防を目的とした身体活動向上プログラムの開発と効果検証に向けて、本年度は活動量基準作成のための観察研究を行った。対象は、日常生活が自立した地域在住高齢者86名(平均72±4.9 歳、男性27名)とした。身体活動量は、3軸加速度センサーを内蔵した活動量計(EW-NK52, Panasonic製)を用いて、14日間調査し、歩数・活動消費カロリーの1日あたりの平均値、およびEx(3Mets以上の活動時間×強度)の1週間あたりの合計値を求めた。また、過去3ヶ月間における上気道感染症(風邪およびインフルエンザ)の発生を質問紙により調査し、身体活動量との関連性を検討した。身体活動量の各指標について、中央値により2群に群分けを行い、上気道感染症の発生割合をX2独立性の検定により比較した。その結果、Exにのみ有意差がみとめられ、Exが高い群(発生者数:7名, 発生割合:16.3%)に比較して低い群(発生者数:16名, 発生割合:37.2%)で上気道感染症の発生割合が低かった。さらに、ROC解析により、上気道感染症の発生に対する身体活動量(Ex)のカットオフ値を求めた。Youden indexから求めたカットオフ値は、11.8Mets・時/週(AUC=0.63, 感度62.9%、特異度72.9%)であった。上気道感染症の発生を従属変数、年齢・性別を調整因子としたロジスティック回帰分析の結果、Exの1週間の合計値がカットオフ値を上回る場合の上気道感染症の発生のオッズ比は、0.31(95%CI=0.11-0.88)であった。平均歩数および消費活動エネルギーとは関連がみられなかったことから、上気道感染症の予防には身体活動の量のみでなく強度にも注目する必要があり、特に中強度(3Mets)以上の活動を増やす必要があると考えられた。
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