研究課題/領域番号 |
16K16602
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
早川 智久 大阪大学, 薬学研究科, 特任研究員(常勤) (60773132)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 老化 / 汗腺 / ヒト / 熱中症 |
研究実績の概要 |
ヒトにおいて汗腺は主要な体温調節機関である。その機能低下あるいは損失は体温の調節機能(冷却機能)の損失を引き起こし、各種疾病を誘発する。特に近年、老化に伴う汗腺老化により引き起こされる熱中症によって搬送される高齢者が増加している。本研究は汗腺の老化メカニズムを分子、細胞レベルで明らかにすることで加齢に伴う汗腺機能低下のメカニズムを解明することを目的としている。それにより汗腺老化に起因する疾病の予防、健康増進に寄与できるものと考えている。本研究における主要な2つの研究プロセスに(1).老齢、若齢の組織を比較解析することによる老化原因の解明、(2).汗腺モデルを利用した詳細な汗腺老化メカニズムの解明がある。 (1)のプロセスのために本年度(H28年度)は皮膚組織サンプルの収集と保存を行った。収集した皮膚サンプルを保存し、今後年齢による比較ができる分だけ集まった時点で加齢に伴う変化を解析する。 (2)では(1)で明らかになる老化原因が汗腺の老化を引き起こすメカニズムを汗腺モデルを用いて解析する。本年度の研究においてはメカニズム解明に必要な評価方法の構築を目指した。汗腺老化を解明する評価系には、若齢の性質持ちながら老化することができる若齢の皮膚組織が必要になる。私は倫理審査を通し、クリニックから美容整形時に得られる若齢の皮膚組織を取得することでそれを解決した。取得した若齢組織を利用することで細胞レベル、分子レベルの事象を解明する評価系を確立した。来年度(H29年度)以降は構築した評価系の応用方法と(1)の研究プロセスで明らかになった老化原因の評価を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は(1).組織解析による老化原因の解明、(2).汗腺モデルを利用した詳細なメカニズムの解明の2つのプロセスからなっている。 (1)に関しては評価対象となる因子の絞込みに関して、未だクリアできていない課題がある。しかしながらサンプルの収集、保存が予定より順調に推移しており、年齢比較に必要な組織が後少しで確保できる。また今後も継続的にサンプルを取得できるラインを確立できている。 (2)のプロセスについてはメカニズム解析に必要な評価システムの構築に成功している。本評価システムは既に安定して運用できている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は(1).組織解析による老化原因の解明、(2).汗腺モデルを利用した詳細なメカニズムの解明の2つのプロセスからなっている。 (1)現在、加齢による汗腺の変化を解明するために必要なヒト皮膚組織のn数がわずかに足りない。来年度はその不足分を補った上で比較解析を行い、汗腺の加齢による変化の原因を明らかにする。 (2)本年度構築した評価モデルの運用法を確立するとともに(1)で明らかになる汗腺老化の原因因子が働く詳細なメカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の使用額に余剰ができ、次年度使用額が生じた理由としては研究プロセスのひとつ、組織比較による汗腺老化の原因因子の同定のプロセスにおいて、高額の物品を使用する実験が次年度に持ち越されたために生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
理由の欄にて記載したように次年度使用額の発生は高コストの実験が次年度へ持ち越されたためである。したがって次年度に行われる実験において余剰分は使われる。主な用途は解析用の抗体およびキットの購入となる。
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