本研究課題は汗腺老化を制御する分子的、細胞的メカニズムの解明を目指すものである。本研究は主要な2つの研究プロセスから成る。(1).汗腺の老化原因因子を明らかにし、汗腺老化の原因となる分子的、細胞的変化を明らかにする。(2).汗腺器官を模した汗腺評価モデルを構築する。その評価モデルを利用して汗腺老化における分子動態を解明することで汗腺老化のメカニズムを明らかにする。 (1)汗腺の老化の進行を既存のガラクトシダーゼ活性測定および老化マーカーの染色で検出することが難しいことが明らかになった。汗腺組織における老化因子の発現変化を検討するためにはRNAの発現解析をする必要があると分かった。現在そのためのサンプルを取得中。発現解析の対象となる因子はp16、p21、Ki67および各種分泌型プロテアーゼである。これらの因子は汗腺の機能低下に関わっている可能性が高い。(2)スフェロイド培養を行なった汗腺細胞は生体内での性質を保持するため老化メカニズムの解明に適しているが、性質が変化しやすいことが明らかになった。そこで、汗腺の老化メカニズム解析のための評価系として性質が安定している不死化汗腺細胞を樹立した。樹立した不死化細胞は生体内での汗腺の筋上皮細胞の性質を保持していた。この不死化汗腺細胞の分化を制御することによって汗腺の機能を再現した評価系の構築が可能になる。その不死化汗腺細胞を用いて老化因子の機能を検討する手法について現在構築中である。今後は(1)、(2)の成果から汗腺老化が起こるメカニズムを解明し汗腺機能の回復方法の開発へ発展させる。
|