研究課題
慢性腎不全(Chronic Renal Failure:CRF)患者において、鉄排出輸送体フェロポルチン(FPN)の発現低下とFPNの作用を抑制する鉄制御ホルモンであるヘプシジンの発現増加により、生体内鉄代謝異常が引き起こされ、体内鉄量が増加していることが報告されているが、CRF関連サルコペニア(骨格筋萎縮)と鉄代謝異常の関連性ついては明らかにされていない。本研究の目的は、CRFにおけるサルコペニアについて鉄代謝異常の観点から、そのメカニズムを解明を目指し、治療法につながる基盤を確立することである。本研究では、8週齢の雄性C57BL/6Jマウスにアデニンを投与しCRFモデルマウス(CRF群)を作製し、vehicle投与対照群と比較検討した。CRF群ではvehicle投与対照群と比較して、有意に血清クレアチニン値・インドキシル硫酸濃度の増加が認められ、腎機能障害と尿毒症を確認した。また、CRF群では体重・骨格筋重量の低下とともに筋特異的E3ユビキチンリガーゼであるMAFbx/atrogin-1とMuRF-1(muscle ring finger-1)の遺伝子発現の増加が認められ、骨格筋萎縮が引き起こされていることも確認した。CRF群では血清ヘプシジン濃度が有意に上昇していた。血清フェリチン値と骨格筋における鉄量の増加も認め、生体内鉄量ならびに組織鉄量の増加を確認することができた。以上の結果から、CRFにおいて生体内鉄代謝異常が引き起こされ、骨格筋の鉄量が増加し、骨格筋萎縮が引き起こされている可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
CRFモデルマウスを作成し、骨格筋萎縮が引き起こされていることを確認した。また、CRF群の血清中で鉄制御ホルモンであるヘプシジン濃度が上昇し、生体内鉄代謝異常が引き起こされていることならびに骨格筋において鉄が蓄積されていることを確認できた。したがって、おおむね順調に進展していると考えられる。
CRFモデルマウスにおいて、生体内鉄代謝異常、骨格筋における鉄蓄積、骨格筋萎縮を確認できたが、その詳細なメカニズムについては不明である。過剰な鉄はFenton反応を介してヒドロキシルラジカルを生成し酸化ストレス障害を引き起こすため、次に骨格筋における鉄蓄積と酸化ストレスの関連性について検討する。また、CRFでは尿毒症を呈し、尿毒素であるインドキシル硫酸が蓄積しているため、このインドキシル硫酸と鉄代謝異常の関連性についても検討する。
3月納品分の支払いが4月になったため、未使用額が生じた。
未使用額は3月納品分として4月に使用する予定である。
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Laboratory Investigation.
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10.1038/labinvest.2017.11.
Wound Repair and Regeneration.
10.1111/wrr.12510.
http://www.tuyakuri.umin.jp/