研究課題
雄性C57BL/6Jマウスを用い左冠動脈結紮後4週間飼育し、心不全動物モデルを作成した。4週後、対照群に比較し心不全マウスでは心機能および筋重量の低下を認めた。また骨格筋NADPH oxidase活性およびNox4タンパク発現が有意に亢進した。骨格筋ライセートを用い、ミトコンドリア機能の主要分子(電子伝達系複合体、PGC-1α、TFAM、SIRT1)を評価したところ、それらのタンパク発現は有意に低下した。またタンパク合成の主要分子であるAktリン酸化の有意な低下、タンパク分解の主要分子であるMuRF-1およびAtrogin-1の有意な増加を認めた。また炎症シグナルの中心分子であるArginase 2(ARG2)のタンパク発現も有意に増加した。これらの結果から、Nox4由来酸化ストレスによるARG2亢進が心不全マウスの骨格筋萎縮において中心的な役割を果たす可能性が示唆された。Nox4由来酸化ストレスがARG2を介してタンパク分解を亢進させるかどうか検討するため、マウス由来骨格筋培養細胞であるC2C12筋芽細胞を用い、Nox4 siRNAによるノックダウンによる機能解析を行った。心不全の病態発症・進展にはアンジオテンシンII(Ang II)が中心的な役割果たしていることから、Ang IIを用いた実験を行った。その結果、Ang IIによりNADPH oxidase活性、Nox4、MuRF-1、Atrogin-1、ARG2が有意に増加し、一方Aktリン酸化は有意に低下した。Nox4 siRNAにより、NADPH oxidase活性、Nox4、MuRF-1、Atrogin-1が有意に改善した。一方、ARG2は改善傾向を認めた。これらの結果から、Nox4およびARG2がタンパク分解において中心的な役割を果たしていることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
計画当初通り、初年度はWTマウスおよび培養細胞を用いた基礎的検討を遂行することができた。Nox4欠損マウスに関して、繁殖には若干時間を要しているものの、実験に使用可能な数まで増えてきており、使用可能なマウスを順次介入する。
今後は、繁殖中のNox4欠損マウスを用い、心不全による筋萎縮におけるNox4およびARG2の役割を検討する予定である。
購入を検討していた生化学、分子生物学実験に必要な試薬等の価格が、当初想定していた価格との間に若干の違いがあり、次年度に使用額が生じた。
生化学試薬等の消耗品に使用予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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